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メリーの居る生活 クリスマス特別編 作: ◆Rei..HLfH. ID:4ekjVRsx DHvNEd9Z 「あ~コタツ最高…」 12月24日。 PM5時 世間はクリスマス騒ぎ。 僕と俊二はコタツでマッタリ。 「24日が終業式ってのはディフォなのかな…もうちょい早く終業式にしてくれれば、最高なんだけどな…」 「校長に直訴でもするか?」 「……それにしても山やん遅いな」 「ふむ…さっき家を出たとメールがあったがな…」 「…【三人いればどんな修羅場も怖くない】なんだよな?」 「下で何創ってるんだろうな…」 僕らは、一階でメリーによって産み出される【物質】に言い寄れぬ不安を抱いていた。 ―――――――――――― AM7時 今朝は寒かった。 氷点下3度、布団から部屋の出口に行くまでに体温を一気に奪われてしまう。 外の世界に出るための心の準備をしている間に(二度寝の予備動作)、目覚ましが鳴る。 幾度となく戦いを交えてきたが、今回ばかりは勝機がなさそうだ。 「ぐあ…手が…とどかねぇ…」 (この場合、起きる起きないでなく、いかに早く不快音の根源を殺(と)める戦いになる) 布団から出れば、やつを黙らせることが出来る。 だが、出れば次は冷気が襲ってくる。 「よし…一年ぶりになるが、やるか…」 意識良好、身体に異常なし。…いける。 布団の中でうつぶせ状態になる。 「3…2…1…そいやッ!!」 カウントダウンの後、勢いよく布団から抜け出す。 すぐさま足で目覚ましを殺める。 制服とカバンを手に一気に一階に駆け降りる。 「うおおおおおおおおお!!」 狙うはリビングのコタツ!! おじいちゃんとおばあちゃんが起きているので、隆一が起きた時には大抵コタツは点いている。 ソファに制服とカバンを投げる。 「討ったー!!」 コタツにスライディングで滑り込む。 「よっしゃ、タイムは!?」(寝ぼけている) 「はいはい、元気なのはいいけど、去年みたいなことにならないようにしなさい」 キッチンからおばあちゃんが出てくる。 「…ふぁーい」 あくび混じりな返事で返す。 去年は、このテクニックを意識がはっきりしない状態で挑んだため、階段で一風変わった階段の下り方をする羽目になった。 正直、涙が出るほど痛かった。 「ということで、おはよう。おばあちゃん」 「朝ご飯は何がいいかしら?」 「昼までだから、少なめでいいよ」 昼は俊二を捕まえて商店街で食っていこうかな。 「そうはいかないわよ。校長先生のお話、今回長いそうよ」 「スタミナ朝食一丁お願い」 どこでそんな情報を仕入れるんだ…。 「はいはいっと」 「おじいちゃんは?」 「朝のお散歩よ」 「元気だねぇ」 「あなたも若いんだから、おこたに入ってないでシャキっとしなさいな」 「耳が痛いぜ…」 それから素早く朝食を平らげ、仕度をして、体が温まっているうちに学校に向うことにした。 「いってきまーっす」 ガチャ 「うひゃー!!冷えるな、オイ」 顔が冷たい。そして痛い。 歩いていると、自然に前屈みになってしまうほどだ。 凍えない内に学校に向かおう。 一人でトボトボ歩いていると。ヤツがいた。 「あいつも寒そうだな…うおっす!!俊二」 「よう…、ちょっとお前、この寒さ何とかしてこい」 「パシるな。それに無理だから。自然の力の前には人間は無力も同然なんだよ」 「くそ…そうなると俺の美顔も自然の前では無力なのか…」 「それ、学園祭でも言ってなかったか?」 「あー寒くて堪らん、走るか?」 「走ったところで、すぐには暖かくならないし、暖かくなる頃には暖房効いた教室で汗だくになるのがオチだろ?」 「時々お前いやに冷静になるな?」 「経験済みなんですよ」 「【知識は経験より希なり】か?」 「色々間違えてると思うぞ?脳も凍りついたか?」 「シャーベット状態になってると思う」 「いっそのこと完全に凍結したらどうだ?」 …この寒さは、何かで気を紛らわしていないと無事ではすまない。 とにかく僕と俊二は、お互いに噛み合わない会話を続けていた。 「あったけー…暖房最高…」 「地球の環境を犠牲にするだけのことはあるな…生き返る…」 暖房の前に二人で陣取る。 「この学校は妙な所だけは、気配りがいいよな」 「あぁ…暖かい水の出る蛇口がある学校なんて、そうそう無いぞ?」 「そのくせ、掃除用具は箒と雑巾だけで…下駄箱は木造と来てる」 「ブルマを残しといてるのは流石に圧巻だな」 「誰も穿かないけどな…あーあったけ…」 「俺が穿こうか?」 「ブルマ穿いて校庭ランニング10周。OK?」 「校庭で遭難する」 「…よっし、席に戻るか」 「そうだな」 十分暖を取ったところで、担任が教室に入ってくる。 「やぁ、みんなおはよう!!寒くないかい?」 …こいつの声を聞くと妙に腹立つ。 理由は簡単。 いつも、やたらと元気だからだ。 今日も、上がノースリーブで下がジャージ(青)と、一般人なら風邪を引く格好でも、平気で来るほどの元気さ。もとい、タフさ。 実はクラス内ではそんなに人気は無い。 その理由も僕とまったく同じ。 この担任は、教師もののドラマに触発されて教師になったクチだ。 まぁ、その『ハート』は悪くない。 むしろ『ハート』の無い教師の方が困り者と言うこともある。 だが、この担任はその『ハート』を間違えた方向に使っているからタチが悪い。 プライバシーという言葉を知らなくて、ストーカーと言う行為の意味を理解してないようだ。 いつか成敗してやろうと思ったその時…。 「先生こそ、頭は寒くないんですか?」 勇者が現れた。 クラス内の誓いとされる行為【担任の頭の事は見て見ぬ振り】を破った命知らずが現れた!! 比較的新しいこの誓いは、担任が頭のことを指摘され一度キレて大暴れしたことがあり、その日の放課後にクラス内だけで決めた事だ。 クラス全体の時間が止まった。 「あ…あた!?」 「ヤバ…!!」 全員が最悪の事態を想像した。 「(…そうだ!!)」 頭上に電球が現れるかのように閃いた。 僕は立ち上がり、一か八かの弁解に入った。 「肩!!肩っすよ!!先生ノースリーブだから寒くないんすか?って。アハハハハ」 ちょっと苦しいかもしれん…。誰か、援護頼む…ッ!! 「そうですよ先生。身体を冷やすとお腹の赤ちゃんに悪影響ですぞ?」 俊二がギャグを交えた援護射撃開始する。 それに釣られ、クラス全体に乾いた笑いが巻き起こる。 この笑いも、全員での援護射撃(一部を除いて演技)だ。 「お、俺は男だろ、どう見たって!!」 その笑いの波によって、勇者の発言はキレイさっぱり流された。 …よかった、単純なヤツで。 「なんと!?あのマドンナ先生は男だったというのか!?」 俊二が大げさにおどける。 「あーはいはい!!もういいから席につけ俊二。HRが始まらんだろ」 「サー・イェッ・サー!!」 席に着くと、俊二は僕に向けて『ナイスプレイ』とアイコンタクトを送った。 僕も先公に気づかれないように、親指を立てて合図を返す。 そして、何事も無かったかのようにHRが開始される。 ――――――――――― 「ん…ん~…」 …寒い。 「……ックシュ!!」 むくりと上半身を起こす。 「…ん?」 何か寒い…。うん、この部屋寒い。 働かない頭で、部屋の温度を漠然とだが確認した。 それと同時に背筋がゾッとするほどの寒さが感じられた。 「寒ッ!?あのバカ、暖房ぐらい入れてから行きなさいよ…」 このまま部屋にいたら風邪を引いてしまう。 急いでリビングに行こう…。 トットットットットットット… 「おはようございますー…うぅ…寒いぃ…」 廊下は部屋より2・3度温度が低かった。 寒い廊下を移動する。寝起きには、これほど堪える苦行は無いだろう。 部屋に入るなり一直線にコタツに向かう。 「あぅーコタツ最高…」 「あら、メリーちゃん。今日は早いのね?」 「え?」 おばあさんに言われ、時計を見ると、時計の短針は9と10の間を指していた。 「今朝は寒さに起こされちゃって…風邪引くところでしたよ…」 「今の時期は冷えるからねぇ。用心しなきゃダメよ?」 「はーい」 ふと、メリーはあることを思い出した。 「そういえば、今日は確かクリスマスイブですよね?」 「そうなのよねー。今年も腕によりをかけてご馳走を作らないとね」 「あ、あの!!私もお手伝いしたいです」 これほどチャンスというチャンスは無い。 この家に来て間もない頃に、食べさせてもらった隆一の料理。 あれは、とてつもなく美味だった。 あの料理の腕は、きっとおばあさんから渡った技だろう。 女の子として、あの料理の腕は羨ましい。 だから特訓をすることにした。 …メニューが増えれば1つ2つ地雷が混ざってても平気だろう。 「いいわよ。一緒にご馳走作って、男どもをギャフンと言わせちゃいましょ!!」 「はい!」 確かにギャフンと本当に言わせれるチャンスでもある。 別にそれが目的ではないのだが…。 「それじゃ、早速買い出しに行きましょうか?」 「う…もうちょっと暖まってからでいいですか?」 「あらあら…ふふふ」 「やっぱり、今日はパーティーとかするんですか?」 「そうね。お客さんも招待しましょうか」 「じゃあ、あとで隆一に連絡して、何人か暇な人を呼ぶように言っておきます」 「助かるわ。と言っても、あの二人でしょうけどね…ふふふ」 「二人?一人はわかるけど…」 「その内わかるわよ。はいお茶」 「ありがとうです。………にが…」 その緑茶は、眠気も一発で覚めるほどの苦い物だった。 ――――――――― 「ふぁ~…」 「だらしないな、あれくらいの戯言で」 終業式が終わり、冷えた廊下を歩いてクラスに戻る。 「お前は瞑想やらなんやらしてたからだろ…あ~眠ぃ」 「あとは教室に戻って、通知表貰って、ハゲの小話聞いて終了だな」 「寝れそうにないな。まったく……ん?」 「どうした?電波でも受信したか?」 「誰かがお呼びのようだ」 ポケットの中で携帯が震えている。 「出前の注文か」 「…………いや、殺人予告だな」 「毎度お気の毒だな」 「かったるい…」 (ピ… 「今度はどこで迷子になったんだ?お姫様」 『黙りなさい、出来損ない家臣』 「言葉の暴力いくない」 『いい?今日は俊二とか何人か連れてきなさい。パーティーするわよ』 「あー、やっぱり今年もやるのか。わかった、いつものメンバーで行く」 『私も料理作るから楽しみにすることね』 「え、それ何?死を共にする仲間を選んで来いって事?」 『それじゃ、頼んだわよ(ガチャン)ツーツーツー…』 「あ、こら!!………はぁ…(ピ)」 「…なんだって?」 横にいた俊二の肩をガシッと掴む。 「……僕達、どこまで行っても親友だよな!!」 「貴様!!その肩を掴んだ手を離せ!!その笑顔も含めて何故だか凄まじく嫌な予感がする!!」 肩を掴んだ手を振り解こうともがくが、逃がさない。 「一緒に逝こうや。親友だろ?」 「ま、待て!!落ち着け!!目を覚ますんだ!!」 「あとは山やんだな。三人で逝こうや…」 「放せ!!俺をまきこむな!!放せ、はなせえええええぇ………!!」 周囲のクラスメイトが可笑しく笑っている。 いつものコントだと思われているようだ。 そんなことも気にせず、俊二を捕まえたまま教室に戻った。 ―――――――――― PM6時 ちょっと小腹が減ってきた。 一階に食料を取りに行きたいが、行ったら精神的に耐え難い光景を見てしまう気がするので、我慢するしかなさそうだ。 「そういえば成績どうだった?」 「僕の方は一学期とそんなに変わり映えがなかったな。そっちは?」 「授業態度が最低評価だったな。あとは平均的だ」 「あー、僕もそんなこと書かれてたな」 あのガリ勉メガネこと川岸でさえ、一度の居眠りで【授業態度悪し。改めるべし】などと書かれたそうだ。 「やっぱりあのハゲは成敗しておくべきだ。社会的に」 「そうだなー。その内事件起こすから止めておくべきだよな。社会的に」 「廊下でのあのコント…ちょっとわざとらしかったぞ」 「そうか?俺はいつも通りな感じでやってたんだが」 俊二が本気を出せば、掴まれた肩なんて簡単に振り解けるのは、百も承知だった。 「…悪いな。付き合わせちまって」 「大丈夫だ。胃薬と血清を持ってきた」 「嫌なら来なくても良かったんだぞ?」 「毎年この日は、ここで過ごすのが俺のルールなんでな」 「ははは。あいつもそんなこと言ってたな――」 ―――ピンポーン 「来たよ来たよ来ましたよ。三人目の勇者が」 「…噂をすればなんとやら。だな」 二人で一階に下りる。 どちらか片方が、好奇心に負けてキッチンを覗くようなマネをしないようにだ。 ガチャ 玄関の外には山やんが立っていた。 「ようこそ、ユートピアへ」 「遅かったな。お前らしくも無い」 「おう。寒いから早く上げろや」 キッチンが見えないように、山やんを招き入れる。 のっそのっそと家に上がる山やん。 まるでクマが二足歩行しているような動きだ。 バタン 玄関のドアが閉まると、山やんの人格が変わる。 「あ~参った参った、来る途中5人ぐらいに絡まれてよー」 「山やんは、視界に入った人全員にガン飛ばすからだろ?」 「そりゃオレのクセなんだよなー。一応謝ってから殴りつけるんだけどよ?」 「謝ってすぐ殴ってりゃ、意味ないわな」 「ははは、違いねぇな」 山やんは、僕の家に入ると【強面の不良】の仮面を外し、【本当の山やん】になる。 喧嘩の日々に疲れると、よく家に上がりこんできて、仮面を外しに来るのだ。 「山崎、一般人には手を上げるなよ?警察沙汰になっちゃ、俺も助けられねぇからな?」 「そこら辺は大丈夫だ。ガン飛ばしから、愛らしい笑顔へ瞬間的に変えれるようになったからな」 「それはそれで犯罪になるぞ」 「立ち直れないくらい侮辱された…」 「あぁ!!山やんのピュアなハートが傷ついた!!」 「なに!?山崎、おまえ体は頑丈のクセに心は軟すぎだぞ!?」 いつの間にかコントになっていた。 まぁ、これがいつもの三人なのだが。 不意に後ろで、とてつもない殺気を捉えた。振り向きつつ一歩引く。 エプロン姿のメリーが、泡立て機を片手に腕を組んで仁王立ちしていた。 「…アンタ達、うるさすぎ」 「す…すまん!!マジゴメン!!」 とりあえず、本気で謝る。 「…フン!!」 そっぽを向き、キッチンに戻って行った。 が、2・3歩歩いたところで、歩みを止め… 「7時には準備できるわよ」 そう言って彼女はキッチンに戻っていった。 とりあえず二階に逃げるように移動する。 バタン… 「こえ~…めっちゃこえ~」 全員でへたり込む。 「初めて見たぞ…あんな殺気を漂わせた彼女…」 「あれが本来の姿だ。覚えておけ」 「戦慣れしてるオレでも、怖気づいたぞ…。泡立て機が殺人兵器に見えた…」 「まったく…何なんだよ、あの威圧感は」 間を和ませるために、話題を変える。 「エ…エプロン姿は可愛かったよな?」 「確かに、俺も稀に見る人材だと思った」 「オレは泡立て機にしか目が行ってなかった」 「あそこでお前が謝ってなければ、俺らの命は無かったかもな」 「本当にありそうで怖いんですけど」 「7時に完成か…」 時計を見る。 PM6時40分 「あと20分…死刑囚はこんな心境なのかな…」 「…ところで隆ちゃんよ?」 「あん?」 「あの娘は…いつだか三人で大暴れしたときに守られていた姫君かい?」 「あぁ、そして学園祭でお前を負かせたグラップラーだよ」 「マジかよ!?オレあんな娘っ子に負けたのか…。いや、負けた理由は解った気がする…」 「あんなナリして、あれだもんな…。さらに同居人だし…」 「あの娘もここに住んでるのか?」 「さらに同室」 「…お前も大変なんだな」 ため息をつく。 「なぁ、隆一」 「今度はお前か。なんだ?」 「メリーの料理は食った事あるのか?」 「無い。無いから怖い」 「食わず嫌いだろ。それ」 違うと思う。 「もうちょっとポジティブに考えようぜ。もしかしたら美味いかもしれないだろ?」 「あー…、まぁそうだけどな…」 『実は料理は滅茶苦茶上手かった~』とか、そんな都合のいいことはあるもんじゃない。 「そういえば、お前さ」 ずいっと俊二が近寄ってくる。 「メリーの事最近意識してないか?」 「ぶっ!?いきなり何を言うか!?」 「ほぉ、恋沙汰か?」 山やんまで寄って来る。 「一つ屋根の下で暮らして、さらにルームメイトって…なぁ?」 「うむ。少しばかりでも恋心が芽生えるってものだろ」 「ハァ……そんなこと分らないよ。僕は――」 「何が分らないの?」 「―って、うわぁ!!」 「うおっとぉ!?」 「ぬおおぉっ!?」 「きゃっ!!」 四人で一斉に驚いた。 部屋に入って来たメリー本人も驚いていた。 「あ~驚いた。入る時ぐらいノックしてくれよ」 「ノックしたわよ」 詰め寄られた時か…。 「で、何の用か?」 「パーティーの準備が出来たから、下に降りてきなさい」 「ぐ…」 「…?どうかしたの?」 「…いや、なんでもない。行こうか」 「いよいよ執行か…短い人生だったぜ」 「希望は捨てるな…」 メリーを先頭に四人でリビングに向かう。 リビングに入ると、まさに豪華絢爛な料理が僕達を待っていた。 「毎年豪華に作るなぁ…」 「これは…流石としか言いようが無いな」 「すっげぇ…」 テーブルには溢れんばかりの豪勢な料理。 「んで…、この形容しがたい物体は一体…」 (僕の席の近くに位置する)テーブルの片隅には、嫌な黒の色をした固形物系の食べ物と。 「これは…スープと言うより汁だな」 俊二の斜め前方には紫色のスープ。 「な…なんだ、このとてつもない妖気は…」 山やんから近い位置に、パンに何か不思議物体が挟まれているサンド…。 「メリーさん、メリーさん」 「ん?何?」 皿を配っていたメリーに話しかける。 「このサンド【ウィッチ】」 「うん?」 「ギャグで作りましたか?」 ガンッ!! 「痛ぇ!!」 「バカ」 おぼんで殴られた。 「ぐぐぐ…」 「何話してたんだ?」 メリーがキッチンに戻った後、俊二が寄ってきた。 「いや、『あの不思議次元からの産物は、あなたの提供ですか?』って聞いたら…」 「まぁ、当たり前だな」 流石に、メリーが魔女だって事は教えられないよな…。 「よく考えたらさ、この料理以外を食べてれば、問題ないんじゃないか?」 いきなり山やんが正論を言い放つ。 「それもいいけど、あからさまに避けてたら気づかれるぞ」 「じゃあ、味を相殺しつつ胃袋に放りこむ」 「それがベストだな。胃薬なら十二分に持ってきている。首尾も万全だ」 食事の前の会話じゃないな…これ。 ―――――――――――― 「さて、皆さん。席に着きましたか?」 準備が整ったので、全員で席に着く。 「全員揃ったようで…。よし、隆一、音頭を取れぃ!!」 「よっしゃ、行くぞみんな!!メリークリスマース!!」 「カンパーイ!!」×6 さあ、始まりました。 生きるか死ぬかの究極の晩餐。 デット オア アライヴ食卓。 まずは、おばあちゃんお手製のから揚げを口に運ぶ。 「やっぱ美味いなぁ、から揚げ」 おばあちゃんの得意料理なので、パーティにはいつもから揚げがある。 ちなみに僕の隠し大好物でもある。 「どれどれ…おぉ、流石おばあさん!!いつも料理が上手でいらっしゃる」 「本当だ、こりゃうめぇや!!」 「ばあさんのから揚げは、世界一じゃな」 美味いものを食べて、舌の味覚に防御壁を作ることに成功する。 よし、覚悟は決めた。 標準を黒い塊にあわせる。 俊二と山やんが、(まだ早い!!死に急ぐな!!)と合図を送っているが、今じゃなきゃ手を出せない気がする。 震える箸で、その固形物を挟み、一気に口に放り込んだ。 メリーを見る。 げ…、すごい期待のまなざし…。 下手な演技じゃ、逆に怒りを買いそうだ…。 意を決して噛む。 ガリ!! ………GALI? 何かいけない物を噛んでしまった気がする。 恐る恐るもう一度噛んでみる。 バリ!!ゴリゴリゴリ!! えっ…えぇ…!? 何か凄い音してるよ!? 勢い余って二回も噛んだし。 ヤバイ、これから来る【味に対しての心の準備】が一気に萎えた。 こうなったら、味がする前に、一気に噛み砕いて飲み込むしかない!! ガリガリボリゴリゴリゴリゴリ!! 出来るだけ味覚を意識しないで、口の中の物を小さくする。 が、どうやら遅かったようだ。 まず、舌に痺れが来た。 その次に、舌の両側面が嫌な味を感じ取った。 本来苦味成分は、舌の中心部で感じられるそうなのだが、お構い無しだ。 舌全体、否。口全体に広がる葬送曲。 み、味覚が破壊される!? 「隆一!!」 俊二がシャンパン(未成年用)の入ったグラスを差し出してくれる。 僕はそれを受け取って、一気に口の中の物を胃に流し込んだ。 「…助かった。サンキュー…俊二。死ぬかと思った…」 「…いや、まだ助かってないな」 「え?」 俊二が指を指してる方向を見る。 「あ…」 「そっか…死ぬほど…不味かったんだ…」 メリーがうつむいて言った。 「あ…その…メ――」 ガタンッ!! メリーが荒々しく席を立つ。 「……………」 メリーは立ったまま動かない。 「メリー…?」 僕は不安になって、メリーに近づいた。 「ッ!!」 パァンッ!! 「!?」 「な!?」 「…!?」 一瞬何がなんだか分らなかった。 頬に痛みが走ったその時、初めて「平手打ち」を食らったことに気がついた。 みんなが固まっている。 僕も。メリーも。 「……………!!」 メリーは玄関に走っていった。 玄関のドアが閉まる音がして、家は完全の無音が支配した。 「痛ってぇなぁ…」 頬をさする。 …ジンジンする。 「ミステイクだな。相棒」 俊二がシャンパンの入ったグラスをよこす。 「まったく…口は災いの元か…」 シャンパンをクイッと飲み干す。 「夜は冷えるからな。着込んで行けよ」 山やんが、ソファの上にあった、僕の上着を投げて渡す。 「サンキュー、山やん」 「隆ちゃん。誠心誠意で謝るのよ?」 「あぁ、分ってるよ、おばあちゃん」 「メリーには、みんな怒ってないとも言っておくんじゃよ?」 「OK」 玄関に向かい靴を履く。 「みんなゴメン。責任持って連れ戻してくるから!!」 「料理が冷めないうちに帰ってこいよ」 「あぁ!!行ってくる!!」 ガチャ!! 流石、冬の夜。 「…メッチャ寒い」 でも、今はそんな事言ってられないな。 僕は商店街に向かって走り出した。 クリスマスイヴだけあって、商店街はかなりの人ごみだ。 …ここには居ない。 直感的にそう感じた。 他を探そう…。 僕は思い当たる場所を探し回った。 メリーと一緒に歩いた並木道。 買い物帰りに寄った河川敷。 あの公園。 なのに…、なのにどこにもメリーの姿は無かった。 残る場所は…。 彼女の姉さんの居る…あの山頂上。 そう。メリーの眠りを解くために走り回ったゴールもあそこだった。 メリーはあそこにいるはず!! 僕は、あの近道を使って裏山に向かった。 「ハァッハァッハァッハァ…!!」 山頂に着いた。 動き回ったので、身体が火照っていた。 あの桜の木の下に、彼女がいるはず。 そう思って、あの桜の場所まで走った。 「うそだろぉ…」 桜の木。今は枝だけになった樹。 そこにはメリーの姿はなかった。 力が抜け、へたり込む。 「どこにいるんだよ…。謝るからさ…。出てきてくれよ…メリー…」 ガサ… 「!?」 枯葉を踏む音が聞こえ、その方向に目をやる。 人影が桜の木の裏から現れた。 「…メリー!!」 桜の木の裏から出てきたのは、メリーだった。 起き上がり、メリーに近づく。 「メリー、探したぞまったk―――」 ヒュン!! 風を切る音がして、反射的に踏みとどまる。 目の前をヒラヒラと舞っていた落ち葉が、真っ二つになった。 メリーはあの巨大なカマを、手に握っていた。 「………何かの冗談だよな?」 間合いを開けながら聞くが、メリーは無表情のまま、うんともすんとも言わない。 「っち…相当頭に来てるってわけか」 ここまで来た手前、尻尾を巻いて逃げるなんて事はしたくない。 だからと言って、ここでカマに引き裂かれる気も毛頭ない。 そして、あの【誓い】にかけて…。 月夜に照らされ、メリーのカマが怪しく光る。 一瞬でも気を抜いたら、あれの餌食だ。 その瞬間、メリーが飛び込んできた!! 「おわっと!!」 カマの振り下ろしを避わす。 地面に大きなくぼみが出来る。 (喰らったらひとたまりも無いな…) 次に右から横なぎが襲ってくる!! 間合いが近すぎる、後ろには避けれない!! ($Θеж℃ё!?)←必死 メリーの左側に飛んでカマを避ける (あぶねー!!めっちゃあぶねー!!) 飛んだ事で、間合いが離れた。 おかげで色々と考える時間が出来た。 (よし、いつだか僕が思いついた攻略法を試すか…) 次が勝負だ。 前回(一日目)のように、長期戦になったら、今度は確実に殺られる。 風の音だけが支配する世界。 二人は睨み合って動かない。 刹那、メリーが疾風のような速さで僕に近づいた!! メリーはカマを振りかぶり、左になぎ払う!! 僕は、メリーの間合いから離れようとせず、むしろ逆にメリーに近づくように、踏み込んだ!! カマが横に振るわれる!! だが、カマは、本来の軌道をずらし、地面に擦れ、止まってしまった。 「攻略法その一・カマは、柄の部分さえ制御してしまえば、刃での攻撃を無力化できる」 刃に近い柄の部分が僕の靴によって、踏み押さえられていた。 だが、メリーはそのカマを力ずくで持ち上げ、今一度薙ぎ払った。 隆一は、思いっきり後ろに飛びのいて、カウンターを避けた。 その隆一を追撃しようと、メリーが間合いを縮める。 「攻略法その二…」 隆一も間合いを詰めた。 メリーはカマの刃を隆一の後ろに持っていった!! このまま手前に引けば、隆一の体は見事に引き裂かれる!! だが、隆一は構わず間合いを詰めていった!! ―――――――― カマは隆一を引き裂く事は無かった。 「カマは内側に刃がついてるため、刃を使う攻撃はカマを引く動作を必要とするものが多い。すなわち、振り下ろしと横薙ぎでは無い攻撃なら―」 メリーは隆一に抱きつかれていた。 「間合いを極限まで詰めれば、攻撃はほぼ不可能なんだよ」 メリーは動けない、否。動かない。 「ゴメンな、僕無神経なこと言った」 「あの黒いの、から揚げだろ?」 「…………」 「あらかた、おばあちゃんが教えたんだろ」 「僕の好物は、おばあちゃんしか知らないんだ」 「…………」 「メリー、何か返事してくれy―――」 ドン!! 「ぬあ!!」 思いっきり押し飛ばされてしりもちをつく。 メリーは、相変わらず無表情だったが、心なしか悲しい顔をしていた。 「…メリー?」 刹那、メリーの身体が頭からサラサラと崩れ始めた。 「…ヒィッ!?」 まるで砂が風に吹かれていくかのように、…儚く崩れていく。 「メ、メリー!?崩れて…えぇ!?」 訳も分らず、隆一は呆然と崩れていくメリーを見て固まっていた。 腰…膝…次第にメリーの身体は崩れていき、とうとう足も消えてしまった。 ―メリーは完全にそこから消滅してしまった。 隆一は、今自分の見た光景が未だに信じられず、ただただ呆然と立ち尽くしていた。 そして、その真実を認めたくはなかった。 今頃になって、頬がズキズキと痛みを帯びてきた。 「メリー…何で…何d――――」 「アハハハハ!!なっさけない顔ー!!」 「へ?」 上の方から、聞き慣れた声が聞こえた。 まさかと思い、上を見上げた。 「あ、メリー!!」 今さっき消滅したはずメリーが、桜の木―― お姉さんの枝の上で足をバタつかせて、僕を見てケラケラと笑っていた。 彼女はヨッと木から飛び降りて、僕に近寄ってきた。 「さっきの動き、結構サマになってたわよ。やるじゃないの」 「いや、さっきのメリーは?」 一番真っ先に言う事はそれじゃないだろ。僕。 「お姉ちゃんの協力で、近くの落ち葉から作った、メリー二号よ」 「…だから様子がおかしかったのか」 「それでも、基本的な動きは私と同じよ?」 「え?じゃあ僕は、メリーの攻撃を避けれるようになったって事?」 「柄での攻撃と、格闘も混ぜて避けれるようになれば、合格ね」 「ぐ…」 「……………」 メリーが僕を見つめている。 …結局二度言う事になるのか。 「メリー、本当にゴメン!!軽率な事言った。本当に、ゴメン!!」 頭を下げ、前方に手のひらを合わせる。 「今度の事で、懲りたかしら?」 「すんごい懲りた!!お釣りが来るくらい懲りた!!」 「…お釣りが来るくらい?」 「…さっき、メリーの体が崩れてた時、頭が真っ白になってさ…」 「…………」 「心臓が止まりそうなくらい、後悔の塊がぶつかってきて…」 「なるほどね…。アンタには相当のドッキリイベントだったわけね」 カマで殺されかけるのも、よっぽどのドッキリイベントです。 「いいわ。許してあげる」 「本当ですか!?」 なぜか敬語になる。 「今日は、年に一度のクリスマスイヴ。アンタとケンカなんかしてたら勿体無いわよね?」 「…ありがとう」 「な、何お礼なんか言っちゃってるのよ。お礼なら、今日この日に言えばいいじゃない!!」 「ははは…、そうだな」 なんだか可笑しくなってしまった。 「なーに笑ってるのよ。さっさと帰ってパーティーの続きするわよ」 「そうだな。みんな待ってる」 ふと、メリーが空を見上げる。 僕もつられて、空を見上げた。 「…あーあ、雪でも降らないかなぁー」 「ホワイトクリスマスか…でも、無理だな。雲ひとつ無い」 「はぁ…。残ねn―――キャッ!?」 「うおっと!?」 上を見ながら歩き出したメリーが、バランスを崩した。 すんでの所で、僕が受け止め、何とか転倒は避けた。 「あっぶねぇ…大丈夫か?メリー」 「あ、ありがと…」 メリーは僕の腕から離れると、そっぽを向いてしまった。 「にしても何があったんだ?」 メリーがつまずいた所を確かめる。 そこは、さっきのメリーが、最初の一撃で放ったカマでくぼんだ穴があった。 「メリー、足は大丈夫か?」 「…大丈夫。捻ってもないみたいだし」 「そうか…。よし、さっさと帰ろうか」 「そうね。冷えてきたわ…あら?」 「え?これは…」 白い花びら? 「これ…桜の花びらじゃない!?」 「本当だ、一体どこから…」 思案する必要は無かった。 こんな粋な計らいをしてくれる人は、他にいない。 二人で同時に、桜の木――メリーのお姉さんを見る。 「うわぁ…!!」 「すっげぇ…!!」 枝に何も付いていなかった桜の木が、 冬にもかかわらず、聖夜の月明りの下で神秘的に輝く満開の桜の花を咲かせていた。 「キレイ…」 「メリーのお姉さんからの、クリスマスプレゼントだな」 「…うん」 「……………」 「……………」 「なぁ、メリー。来年も、この光景を見れるかな?」 「…さぁね?あなた次第ね。」 「そうか…」 僕とメリーは、その幻想的な光景をいつまでも眺めていた。 拍手っぽいもの(感想やら) ※ネタばれチックなので、感想やレビューから先に読む人は注意。相変わらずの秀作。とっても楽しめた。ひとつだけ言うとすれば、作者のRei.HLfH.さん自身も「やたら長いので覚悟してください。」とおっしゃっているように前半の日常の描写が長い。やや冗長な感じをうけるくらいに。とはいっても、「メリーのいる生活」なのだから日常の生活の描写の中に萌えを見出すという意図なのかもしれない。謎物体については、おばあさんたちと一緒につくっているから、そんなに劇物はできないはずだと無意識に思っていたのだろうか。見た目は悪いけど、実は愛情がこもっていて味はおいしかったとか、(死なない程度に)まずいけど、メリーを気遣って「おいしいよ」というとか、そんなことを期待していたけれども、料理の腕は超地雷級だったということだろうか。元は食材だっただろうに、あそこまでのものをつくれるのは一種の才能かもしれない。担任の先生に食べさせてあげたい。メリー2号が崩れるシーンには愕然とした。隆一やそれを取り巻く人々と同じようにメリーさんとの幸せな時間がこれからも続いて欲しい思っていたから。崩れたのが実体でないことにほっとした。そうして仲直りをした二人を祝福するようにラストのお姉さんの桜の花びらのシーンがとても美しく、その光景が目に浮かぶようだった。 -- 317 ID pVfVF/lr (2005-12-25 16 44 16) 名前 コメント
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メリー Merry 所属リーグ:東北社会人サッカーリーグ2部南リーグ(6部相当) ホームタウン:福島県/福島市 公式サイト 公式Twitter 公式YouTube 公式Instagram 公式Facebook
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注意書き このお話は、まだ完成していません。 そのため、物語の内容が一部変更される場合があります。 ご了承くだしあ 気が抜けるほど長いお話です(作成途中の現在で「六日目」以上) 読むならばそれなりの時間を確保して取り掛かってください。 相当な長さなので、一区切りずつ公開して行こうと思います。 更新が止んだら、作成中なので、完成まで待ってあげてください。 というわけで、長らくお待たせしました。 今回のコンセプトは、自分が中二展開でメリーを書くとどうなる?です。 メリーと隆一の戦いを、お楽しみください。 作: ◆Rei..HLfH. メリーの居る生活 番外編? 闇夜の舞踏会 ビュー…!! ピュー!! 「凄い風だな…」 「そうね」シャッ…シュッ… 午後3時 いつもと変わらない日曜日。 いつもとは何か違った休日。 僕はマンガを読みふけ、メリーは鎌の刃を研いでいた。 天気の悪い休日は、部屋でのんびりするのに限る。 昼は天気が良かったのに…、出掛けないでよかった。 「あ、そういえば洗濯物取り込んだっけ?」 シャッシャ… メリーが刃を研ぐ手を止めて、僕を見る。 「洗濯物…出てるの?」 「今日は途中まで天気良かったから…多分」 今、おばあちゃんは買い物に行ってて居ないはずだ。 じいちゃんは散歩に行ったきり戻っていない。 つまり、洗濯物はこの暴風に晒されている事になる。 「何か雲行きも怪しいよな」 僕は窓から空を見上げた。釣られてメリーも空を見る。 午後3時だというのに、やけに暗い。嫌な空模様だ。 「そうね…。降ってもおかしくないわ」 「よし、入れてこようか。メリーも手伝ってくれ」 「…仕方ないわね」 渋りながらも、あっさりと了承してくれた。 自分の服が濡れるのは嫌なのだろう。 一階のリビングに向かい、僕は庭に出るため窓を開けた。 轟々と唸り声のような音が聞こえると同時に、待ち構えていたかのように、リビングに強い風が入り込む。 これじゃ、雨が降るのも時間の問題だろう。 「うっへー!!すげぇ風…うわっぷ!!」 「嫌な風…早く済ませましょう」 庭に出た直後に強風に押されて、二人してよろめく。 「隆一、洗濯物は大丈夫?」 「飛ばされてる物は無さそうだな」 おばあちゃんは、物干し竿に無駄なスペースを作らない。 均等に並べられた洗濯物を見れば、一目瞭然だ。 「飛ばされる前に早いとこ入れちゃおう。僕らも飛ばされるぞ!!」 「ねぇ隆一、上の竿はどうやって取ればいいの?」 僕の家の物干し台は二段になっている。 その上の段に掛かっている竿は、棒で引っ掛けて下ろす事になっているのだが…。 あれ、棒が無い…風で飛ばされちまったのか? 「あれは長い棒で引っ掛けて下ろすんだけど、その棒が消えてる」 メリーに簡潔に説明する。 「えぇ…!?仕方ないわね…おいで!!」 「?」 メリーが何かを呼んだ。 何を呼んだかと思ったら、リビングからメリー愛用のカマがすっ飛んできた!! 「うをぉお!?」 僕のほうに向かって来てるわけじゃないが、僕は大きく飛び退いた。 カマは、まるでメリーが操っているかのようにふわりと回転し(実際操っているのかも知れないが)、 メリーはそれを手に取った。 「これで、届くんじゃない?」 「あ、あぁ…。届くだろ」 メリーはカマの柄を長く持ち、刃の部分で竿を突付いた。 「ん…先っぽが丸いから難しいわね」 今度は爪先立ちをしながら、一生懸命竿を降ろそうとしている。 おばあちゃん…。 カマで洗濯竿を下ろす光景を見ることになるなんて、思いもよらなかったよ。 「…って、ヤバくないか…あのタオル…」 下ろしている洗濯物の中に、洗濯バサミが外れかけているタオルを見つけた。 それを狙ったかのように、これまた強い風が吹く。 「…っあ!」 同時にメリーが小さく声を漏らした。 その強風に煽られて、竿から一枚のタオルが飛んでいってしまった。 「…DASH!!」 僕は庭の外に飛んでったタオルを追いかけた。 タオルは家から出た先の道のど真ん中に落ちていた。 「回収完了…また洗わないとダメかな?」 「隆一ーこっちは全部入れたわよ」 庭から挟まれた垣根の向こうから頭を出して、メリーが知らせてくれた。 「ナイスだ。さっさと戻ろう」 「そうね。―――――あら?」 「どうした?」 メリーが何かに気づいた。 「…やけに…暗くない?」 「…本当だ」 庭の外は、まるで夜のように暗くなっていた。 さっきまでは、わずかな太陽の日が提供されていたが、 庭から一歩出たその瞬間から、まるで別の空間のように暗闇に包まれていた。 それに…。 いつの間にか…風が止んでる? 「これ…おかしいだろ」 「何が起きているの…?」 「分らない…とりあえず家に戻ろう」 「そうね。外は気味が悪いわ…。とても…不安…」 メリーが灰色の空を仰ぐ。 その瞳には、微かにだが憂いの色が見えた。 「お前がか?珍しいな。茶でも飲んd――――――」 ビュウウウウウウウウ!! 止んだと思った風が、今までにない突風となって、僕らを飲み込んだ! 「う、うわああああああああ!!」 「キャ…、りゅ、隆一!?」 「隆一!!どうしたの、隆一!!ねぇ!!」 ………… 気が付いたら俺は空を見ていた。 黒い…暗い…全ての物を吸い込んでしまいそうな空…。 「っく…あれ?」 上半身を起こすと、側にメリーがしゃがんで俺を見つめていた。 「隆一!!大丈夫!?」 「俺は…――。あぁ、意識が飛んだんだな…」 「あぁ…よかっt――じゃなくて…。し、心配させないでよね!」 「わりぃ、俺は大丈夫だ。…家に戻ろう」 よろめきながら立ち上がり、ズボンについた汚れを叩いて落とす。 まだ衝撃が残っているのか、おぼつかない足取りで歩き出す。 家に入る前に、メリーが俺の前に立ちふさがって再度訊く。 「ねぇ、隆一。本当に大丈夫なの?」 よほど心配なのか、近づいて俺の顔を覗き込んでくる。 「…何が?」 「何が?って、さっき倒れてたじゃない!どこか怪我してない?」 「風に呷られて転んだだけさ、別にどこも打ってない。それより、またあの風が来るかもしれない。早く入ろうぜ」 前を立ちふさがるメリーを押しのいて、家の中に入る。 「…………まったく」 メリーは溜息をつきながら、俺の後に家の中に入った。 「ザーザーーーー…」 カチッ 「ザーーーーー…」 カチ 「ザーーーー…」 「おいおい、本格的におかしくないか?」 家に入ってまず俺らがした事。 それはテレビを見ることだった。 最初は天気予報を見ようとして、テレビの電源を入れたが。 ブラウン管に映し出される物は、砂嵐だった。 試しにチャンネルを変えてみたが、どうやら全局砂嵐キャンペーンを開催しているらしい。 「世界と隔離された…って感じだな」 「そうね…普通ではあり得ないわ。こんな事」 「ネットは繋がるかなっと…」 二人で二階の俺の部屋に行き、パソコンの電源をつける。 鈍い起動音を聴きながら、窓の外を見る。 …よく見たら、近所の家。遠くに見える高層ビル。 全てに電灯は灯っていない。 こんなに暗いのに…。 「隆一、立ち上がったわよ」 暗闇に飲まれた見慣れない景色を眺めてるうちにパソコンは立ち上がった。 「おう、どれどれ…」 カチカチッ… いつも通りの手際で、IEを立ち上げてみる。 【404 Not Found】 だめだコリャ。 後ろでパソコンの画面を覗いたメリーもため息をつく。 「メリー。電話は繋がらないのか?」 メリーは少し考えた後、 「…待ってなさい」 と言って、廊下に出て行った。 …が、1分もかからないうちに、戻ってきた。 「厄介ね…、私の知り合いにも電話が通じないわ」 「知り合いって?」 「アンタは知らなくていいの!」 それもそうだ。今はそんなこと訊いてる場合じゃない。 「テレビにネット、特別なような気がするメリーの電話も使えない…と」 「家電類が使えるから、停電でもないし。余計怪しいわよね…」 「どうする?このまま家で待機してるか?」 「普通の停電ならそうしたい所だけど…、今の状況じゃそれが安全なのかも判らないわ」 「安全なのか判らない…って?」 メリーが睨みつけるように、窓の外を見る。 俺も外を見る、さっきより暗くなってる気がする。 今この状況で、窓から化け物が飛び込んできても、俺は不思議とは思わないね。 「私は周りの状況を調べてみるわ。隆一は家でおとなしくしていて」 「おい、一人で大丈夫かよ」 「一人だからいいのよ。あんたなんか連れて行ったら、もしもの時足手まといになるじゃない」 言いながら、メリーは押入れから靴を出し、部屋の窓から出て屋根に立つ。 「何かあったら電話するわ。それまで外には出ないこと。来客はよく見極めて、迂闊に中に入れないで」 「あ、おい!!」 「それじゃ、1時間程度で戻るわ、おいで!!」 必要なことだけをペラペラ喋って、 鎌を呼ぶと同時に人並みはずれた跳躍で屋根から屋根に飛び移り、次第に闇の中に溶け込んでいった。 「ったく…、『何かあったら電話する』って、電話は通じないんだろうが…」 それに、鎌を持ち出して出かけるって事は『もしもの時』ってのはありうるしな…。 「仕方ない、行くか…」 もし会えなかったら、1時間以内にここに戻れば良いだけの話だ。 俺はリビングの棚に置いてあったクラフトナイフを手に、家を出た。 「……………フン…」 暗闇の空を眺め、メリーの飛んで行った方向に向かって漆黒の町に歩いていった。 「これは…」 やっぱりおかしい…。 平らで立ちやすい屋根を見つけ、そこで止まる。 人一人どころか、野良猫一匹、スズメ一羽すら見当たらない…。 言いがたい恐怖に襲われる。 人も動物も何もかもが死滅した世界に、私と隆一は来てしまったのではないか。 さっき廊下で電話をかけたとき、ホッペをつねって痛かったから、夢ではないのは判った。 「一体…何が起こってるの?」 その言葉に返答はなく、そのまま闇に飲まれてしまう。 …闇? 辺りを見回す。 そういえば、辺りには灯りになる物は無いのに、視界は悪くない。 それどころか10mほどなら難なく見える。 ハッと息を呑む。 「これは…闇じゃない…黒…黒の空間?」 黒の空間…時空儀式で生まれる人工空間。 本来は身を隠す為に…、つまり暗殺に使う物のはず…。 「まさか…こんな大規模な人工空間、生み出せれるはずが…」 必死に否定する。 でも、今この状況は、それの全てに当てはまる。 一体誰が?何の為に? 私は自問自答を繰り返した。 カァ …? 「カラス?」 やっと生き物に出会ったと思った。 けれど、その生物を見て、私は今置かれている状況の深刻さを知る事になる。 電線にとまるカラスのような物は、煙のような塊で、実態は無いに等しい。 だけど、赤く黒い血のような目は、その生き物がそこにいる事を物語っている。 「…何…この生き物…」 少なくとも、この世界の生き物ではない。 この黒い世界の副産物か…それとも、この生き物も故意に生み出された物なのか…。 カァ 「!?」 後ろを振り向く。 さっきまで何もいなかった電線に、もう一匹、同じカラスのような生き物がとまっていた。 カァ 「っく…」 また別の方向に、カラスがいつの間にか姿を現す。 カァ…カァ 増えていくカラスたちを目で追っていく内に、周囲にカラスが次々に増えていった。 「これは…囲まれてる…!?」 カラスたちは私を取り囲むように集まり、その赤い目でこちらをギロリと睨んでいた。 電線、屋根から生えたアンテナ、木の枝。所々が黒い塊になっている。 「実体が見にくいから何匹かも解らないわね…300匹くらいかしら…」 カァ!!カァ!! 「…!」 カラスの群れの中にいる、ひときわ大きい体のカラスが翼を広げて鳴きだした。 その声と同時に、他のカラスも一斉に鳴きだす。 「(…来る!!)」 私は鎌を構え、腰を深く落とした。 大きい体のカラスが鳴き終えると、次第に周りのカラスも鳴き止み、辺りに沈黙が戻る。 クァーーー!!! 体の大きなカラスが、咆哮とも言える声で鳴くと、周りのカラスが一斉に私を目掛けて突進してきた!! 「ふっ!」 タンッ!! 一度、その場所から大きく跳躍し上空に逃げる。 目標を失ったカラス数匹が、屋根に激突し粉々になって砕け散っていく。 激突を免れたカラスたちは方向を変え、上空にいる私に向かって凄まじいスピードで飛んで来る!! 「たあぁッ!!」 ビュオォウ!! 下から襲い掛かるカラス達に、鎌を振り下ろす!! ビチャビチャビチャ!! 黒い塊が刺さった鎌を構えなおし、落ちながら今度はカラスの集団に横薙ぎをお見舞いする。 「やぁッ!!」 ザシュッ!! 何匹か裂いた感触を確認した後、また構えを直し着地の準備をする。 タッ…ザザザッ!! 屋根に着地すると同時に、前方に転がり追撃を避ける。 そのすぐ後に、さっき着地した場所にカラスが勢い余って墜落する。 「(今ので大体半分…いや、1/3くらい…次で行ける…かな?)」 数の目算をしながら、道路向かいの民家の屋根に飛び移り、カラスの大群から離れる。 でもカラスは私をすぐに捕捉し、また勢いをつけて突っ込んでくる!! 「ふぅ…」 一呼吸吐き、高速で向かってくるカラス達を見て、鎌を後ろ手に回しクスリ…と笑った。 「足場さえあれば、あなたたちなんて敵じゃないの。…バイバイ」 「さぁってと、あいつはどこに行ったのかねぇ」 誰も歩いていない狭い道で、俺は俺に語りかけた。 見慣れない町に冒険心を沸きたてたのは、ずいぶん昔の話。 今ではさっさと目的地に着いて、さっさと用を済ませたい。 「…にしても、こりゃ暗いって感覚じゃないよなぁ…」 暗い割りには辺りが良く見回せて、なんだか不思議な世界に迷い込んだみたいだ。 「まぁ、灯りがいらないから、こっちの方が助かるからいいんだけどねー」 何も無い空を見上げる。何度見ても同じだ。 月も星も見当たらない、蓋をされたような空。 「月夜の散歩ってのが気持ちいいんだが…、まったく、趣の無い演出だな」 タッタッタッタッタッタッ…!! 「…?」 手をポケットに突っ込み、臨戦態勢に入る。 近辺の状況…。一般道。左右に住宅、左方住宅の塀が低い…か。 後ろじゃねえ…、…上から聞こえる。屋根…メリーか? 「誰かいるのか?独り言ばかりだと寂しいから顔を出してくれよ」 女の子と一緒なら、雰囲気出るんだろうな。 ジャリ…ジャリ… 「………」 大佐、後ろに何かいるぞ。 油断したっぽいな。回り込まれたか。 「まいったなぁ、ダンボールもないし誤魔化せねえや。って、見つかってたら意味ねえか」 ため息をつきながら後ろを振り向く。 「おやおや、これはまぁ」 俺はどうやら、煙っぽくブラックなキャットやワンコにストーキングされてたらしい。 塀の上にいる猫(命名 クロ)も含めると、犬猫6匹か。 体の実体つかめないし、目が赤いし。なかなか世紀末的な生き物だな。 「おかしいな、俺って動物には好かれないタチなんだが…撫でて欲しいのか?ん?」 それより触れるのかが問題だ。 グルルルル… 「ん、今のは唸ってるのか…それとも腹の虫か。もしかしてエサが欲しいのかい?」 って言うか、俺がエサって展開かな。うん。 グアアアアアァァッ!! その黒い生き物は、一度咆哮すると、俺に向かって一直線に走ってきた。 「狂犬病でも、そんなシャクに障る声で鳴かないってぇの…」 俺はクラフトナイフを手にし、襲い掛かってくる犬(命名 無糖)を…蹴り飛ばした。 ドカッ!! キャイン!!キャン!! 無糖は痛々しい悲鳴を上げ宙に浮き、塀に叩きつけられた。 「あー、動物っぽいものでも一応愛護してやる。バラバラってのは、猟奇っぽいからな」 シャー!! クロが威嚇する。 「そう怒るなよ畜生ども、ナイフはあいつを切り裂くために使わないでおいてやるから」 俺はクラフトナイフをしまうと、愛くるしい動物たちとふれあいガチンコバトルを繰り広げる事にした。 さて、今から質問することに冷静に答えるんだ。 Qここはどこだ? A…解らない Q僕は誰だ? A皆のアイドル隆一だ Q何故ここにいる? A情け容赦ない突風にあおられて、気を失ってここにいた。 Q急に意識が飛んだ? A急や よし、自我が無事なら後は何とかなるな。 自問自答を終え、むくりと起き上がる。 「さて…、マジでここはどこでしょう」 前は文字通り木の壁、右には木、左にも木。 「よっと」 立ち上がって、軽くストレッチをしてみる。 どうやら身体は健康らしい。 「五体満足って素晴らしい事だな」 服についた湿った土を叩き落としながら、辺りをぐるりと見回す。 どこか見覚えのあるこのフィールド、ふと、視界に何かが映った。 お世辞にも立派とはいえない小さな小屋が、そこにあった。 「あれ?もしかして、秘密基地…か?ってことはここ公園?」 どうやら僕がのびていたのは、幼いながらも玄人思考で作った秘密基地の前だったようだ。 (どうせなら、秘密基地の中で倒れていたかったな) ここは最近、小娘を追っかけて訪れた事がある。 「ますます状況が読み込めないな。何だって言うんだよ…」 メリーと出会ってから、少しだけ非日常的なイベントには慣れてきたつもりだったが、 今回は、少し度が過ぎる。 「…そうだ!メリーは!?」 今頃になって気付く。 こんな事が起こるのは、常にあいつが中心にいることは間違いない。 僕はもう一度、周辺を見回していた。 やっぱりいない。 ここにいるのは僕だけなのだろうか。 「仕方ない、探しに行くか…」 きっとメリーも僕を探してるはずだ。 とりあえず家に帰ってみよう。 僕は垣根の隅から四つん這いになって、公園にはって出た。 「あらー、さっきより暗くなってる気がする」 どれだけ気を失ってたのかはわからないが、町の一面を覆いつくす暗闇に辺りは包まれていた。 公園を見回してみると、砂場や滑り台付近にオモチャが放置され、ベンチにはランドセルが置いてあり、 まるで、一瞬にしてこの世界が元の世界と切り離されたような印象を受ける。 「って、あれ、見える?暗く…無い?へ?」 遠くにある砂場が見れるのに気付いた僕は、試しにさらに遠くに視線をやってみる。 ぼんやりとだが、その先が見える。 辺りが黒かったから、暗いって印象があったけど、いざ真っ黒になってみると…。 「黒い世界…だな、ますます奇天烈な現象だ…ウゥ…」 不気味な感覚に身震いする。 さっさと家に戻ろう。 僕は公園の出口に向かって、少し早い歩調で歩きだした…。 グルルル… やべ。何か聞こえたぜオイ…。 公園の中央まで歩いたところで、歩を止める。 こんな声を聞いた自分の耳を呪うべきか…。 後ろを振り向く。 「いきなり後ろから噛み付かれなかったことを感謝するか…」 僕の後ろにいたのは犬だった。 だが、これまた奇天烈に輪をかけたビックリ生物。 僕は動物番組をよく見るが、体が煙みたいな犬なんて見たことない。 「興奮してるねぇ、それとも腹ペコで気が立ってるのでらっしゃい?」 いかん、動揺して語尾がぶっ飛んでる。 マズイな。 かなりマズイ。 今メリーがいないとなると、ガチンコで不思議生物と殺りあうハメになる。 選択肢ミスったらカレー先生の教室か、虎の道場に行きそうなほどだ…。 ここ数日の行いを反省してみる。 …死亡フラグは立ててないはず。 いや、今の状況下じゃフラグもクソも無い。 くそ、現実を見るんだ僕。 近くに武器は? おっと、都合よくバットが横に落ちてるじゃないか。 僕は犬と目を合わせながら、そっと、自分の足元に落ちているバットを拾い構える。 (一応言っておくが、バッターよろしくな構えじゃないぞ。前に構えてる形だ) メリーとの特訓で俊敏さには定評あるが、犬の突進を避けた事なんてない。 それ以前に、避けるに重点置いても、問題は解決しないな。 出来れば一撃で脳天フルスウィング&サヨナラホームランを狙おう。 失敗したら…。 その時考えよう!! もう時間が無い!? 心の準備が出来てないってのに、犬まっしぐらに僕に飛び掛ってきた!! ガアァァァァッ!! 「う、うわあああああああぁぁぁぁぁっ!!」 僕はてっきり突進で来るかと思っていたが、犬は予想GUYな跳躍力で飛び込んできた。 バットじゃ反撃できないと判断した僕は、横に転がって犬の突撃をかわす! ズザザザッ!! 「く、くそ…!!」 すぐ立ち上がり、バットを構えなおすが、足がガクガク振るえて動けなくなる。 立ってるのが精一杯だ、気を抜いたら腰抜かしちまう。 「ハァッ…ハァッ…ハァッ…」 恐い…心臓が恐怖で締まりすぎて止まってしまいそうだ。 死ぬのか?マジでこいつに殺されちまうのか!? グルルルルルル…!! 今のままじゃ…次のターンで確実に殺られる!! 畜生!!何かいい案は無いか!? 思いつけ!それか思い出せ!! 何か…何か…!! 『まったく…隆一は守りに入ることばかりね…』 『うっせぇ!僕は平和主義なんだ!!』 『そんなこと言ってたら、どうにもならない相手と対峙した時、死ぬわよ?』 『ぐ…』 『あなた、避ける事と攻撃を無効化させるアイディアは素晴らしいわ。認めてあげる。』 『え?』 『自惚れないで。…一人前になるならこれを覚えておきなさい』 『覚える?』 『そう。自己防衛システムを確立させるのよ』 『何だそれ?』 『あなたなりに言い換えたつもりだけど…、自分の身に危機が迫ったとき、人間は今まで以上の力を発揮するわ』 『あぁ、なんだっけ…火事場のクソ力?』 『火事場の馬鹿力よ』 『ぐぅ…』 『避ける事に能力が向上するか、相手を倒す事に能力が向上するかは、わからないけれど、防衛システムが確立すれば、どうにかなるかもしれないわ』 『確立って、言われてもなぁ。厨漫画臭いな。いわゆる覚醒じゃないか?』 『覚醒…というよりは…そうね、精神に大きな余裕ができるから動きやすくなる…って所かしら』 『余裕?何か新しい力が目覚めてーとかじゃないの?』 『まったく…、そんな簡単に新しいスキルが手に入るなら困らないわよ』 『っていうか、余裕が出来るってどういうことだ?』 『その時の感情―――焦り、不安や高揚感を一度に全てをリセットするの。そうする事で、無心になって次の行動に素早く体が動くのよ』 『無心で体が動くって、達人の域だぞ』 『そうよ。あなたの避ける技術は達人と行っても過言では無いわ。だから―――――』 『意義あり!!被告は守りだけでは死ぬと言っていたではないか。守りにさらに強くしても意味無いと思うぞ?』 『あんたね…。平和主義者だからって、完全に無抵抗って訳じゃないでしょ?』 『はい、ごめんなさい』 『避けスキルS攻撃スキルEでも、抵抗くらいするなら、このシステムは意味あるの!!わかった!?』 『はい、先生』 『よろしい。それじゃ早速、そのシステムを確立させてみましょうか』 『一抜けた!!』 『あ!?こら!!まちなさーい!!』 『スタコラサッサだぜー!!』 よくある回想終わり。 さて、今この時が、そのシステムを稼動させてピンチを切り抜ける所なんだろう。 (回想の間は時間が止まる、これ正論よ) くそ、あらかじめ確立させておけばよかった…。 対メリーの為に防衛システム確立しても、結局は手加減してくれるから意味無いと思ってたんだが…。 メリー以外とドンパチは想定外だった。 まさに後の祭りだな。 僕のよく読む漫画なら、次の一撃で瞬時にそのシステムが発動して、反撃のチャンスが生まれるってのが王道だが、 足がガクガク、腕がブルブルの腰砕け野朗に、そんな奇跡的な展開が訪れるものなのだろうか。 僕は、これからどうなる? A・絶体絶命のこのタイミングでメリーが助けに来てくれる B・頭のいいナイスガイの僕が、とっさに防衛システムを確立させ窮地を凌ぐ C・助からない。運命は残酷だ …あかんて!! この展開でこの選択肢はあかんて!! 犬に助けてもらえる展開なのに、襲おうとしてるのが犬じゃ本末転倒じゃん! そんな脳内会議が意味も無く進行するなか、とうとう犬の『待て』は限界ラインを越えてしまった。 グアアアアアアアアア!! 「いやあああああああああああっ!?」 今度こそ死ねる!?大往生!? グッバイ人生!ウェルカム胃袋!? そこからは、見るもの全てが、まるでスローモーションのように動いて見えた。 犬が僕を目掛けて飛び掛ってくる。 足は動かない、避けられない。 手が痺れて動かない、塞ぐこともできない。 僕に出来ることは、飛び掛ってくる犬を見ているだけだった。 抵抗できない僕は最後、それも拒否した。 怖かったから。 絶命するであろう一撃を、受け入れることが怖かったから。 僕は目を閉じた。 まぶたの裏で、今まで出会った人達の顔が浮かんできた。 そうか、これが走馬灯か。 もう、終わりらしい。 パァンッ!! キャインッ!? 「ッ!?」 突然の破裂音。 そして生き物の悲鳴。 …あれ?僕生きてるみたい!! 「な、何!?何!?」(錯乱中) 周りを見ると、あの犬が遠く10m程離れた所でのびている。 何が起きたのか、サッパリわからん。 解る奴がいたらここに来い。そして僕に説明しろ。 「それじゃあ、何でも知っているこの魔法使いさまが直々に説明してあげようかしら」 どっかで聞いたことのあるこの透き通った声。 声のした方向を向く。 黒の世界に、紅一点の満開の花弁を纏った桜の木が、そこにあった。 その桜の木の枝には、メリーではない、メリーによく似た少女が座っていた。 彼女は、背中ほどまで垂れた金色のポニーテールを揺らし優しく微笑んでいる。 その微笑と、着ている純白のワンピースが眩しく、似合っていた。 歳はメリーと同じくらいか、少し幼く見える。 雰囲気のせいだろうか。 「よっと!」 枝から飛び降りた少女は、ゆっくり僕の前に立った。 「お久しぶり、元気にしてたかしら?」 「え?あ、ええ、まあ…」 今さっき元気とは正反対の状態になるところだったがな。 「まったく、暗くなったから雨が降るかと思って外に出たら、こんな事になってるとはねぇ」 まずい、普通に会話が始まった。 「待った!!…失礼ですが、どなた様で?その桜の木は?魔法使いって?あんた誰?あの犬は?」 相手が喋りだす前に、今疑問に思ってることを一気に聞く。 正直、今の状況がまったくわからん。 「あら、どなた様って、失礼ね。前にこの桜の木の下で話したじゃない。あの子のこと」 あの子?メリーの事か? 「それに、魔法使いなら、こんなしみったれた世界に桜の花を咲かせることなんて、わけないわ」 どうやら、新手の魔法使いらしい。 流行っているのか。魔法使い。 「あのワンちゃんには、ちょっと吹き飛んでもらったけど、お邪魔だったかしら?」 「いえいえ、とんでもございません」 「あと数秒遅かったら、仏様になってたわね」 何でこの娘は、単語に年季が入っているんだ。 子供っぽいのに、妙なギャップがある。 っていうか、マジで誰だ。 問い詰めたいが、『前に会った』と言われている以上、聞き直すのは気まずい。 「この世界は、一体なんなのさ?あの犬も」 話題を変えて、今の状況を聞くことにした。 何でも知ってるんだろう?教えてくれ。 「むむ…、ちょーっと待ってね、整理するから…」 少し困った顔をして、自分の額を人差し指で突付きながら唸ったあと…。 「詳しく話すと長くなるんだけどね、魔法とはちょっと違う、空間儀式という方法で作り出した空間がこれなのよ」 「黒空間って言って、文字通りそこいらを黒く染める空間なんだけど、今回それとは別に、いる筈の無い影みたいな魔物まで出てきてるわけ」 「この影の正体は解らないんだけど、今のところ動物の形しか見てないから、怨念の塊みたいな物がウヨウヨしてるって思って」 「以上、解説終わり!!」 文句無しの説明が終わった。 まったく意味が解らない。 ただ、僕はトンデモ世界にいるということは、よくわかった。 「他の人間はどうなったんだ?」 「多分、別の世界として切り離されてるんだと思うよ、これほど強い空間儀式だからね…」 「スケールでかいなぁ…」 「今こうしている時にも、元の世界は何の変化も無く生活を送っているはずよ。私たちがいないって所を除けばね」 事態に感心しながら、別空間ってことになっている公園を見回す。 どうりで、ランドセルが落ちてたり遊び道具が放置されているわけだ。 無機質な物は、こっちの世界にも持ち出されたらしい。 グルルルルルルル… …あの吹き飛んだ犬が、起き上がりながらこっち見てる。 「…まさか、本当に吹き飛ばしただけだったの?」 「しつけがなってないねぇ。ご近所に迷惑だよ」 いや、そういう問題じゃないぞ。 「魔法使い様、キツイお仕置きをあの犬畜生めにお与えください」 「あらほれさっさっとね」 少女は、空間をチョンッっと突付いた。 突付かれた空間は、次第に光を伴いながら丸くなり、バレーボール程の大きさになった。 そのバレーボールの前に、人差し指と親指で○を作り、でこぴんをする要領で…。 一気に人差し指で、その球体を弾いた!! パシュッ!! まばゆい光を帯びた弾は、勢いよく犬の頭に飛んで行き、 パァン!! 一段と綺麗に弾けた。 「………!!」 犬は叫びを上げる間もなく絶命し、煙のようにかき消えた。 「すっげぇ…」 非日常的な世界で、非日常的な少女が、非日常的な必殺技で、非日常的な生き物を粉砕した。 日常的な日々カムバック。 「さてと…、私は他の動物たちを狩りに行くわ」 「ぼ、僕は何すればいい?」 って言うか、一人にしないでくれ。 次一人で襲われたら、確実にDEAD ENDだ。 「あなたは、メリーのところに行ってあげて、きっと心配してるわ」 「んなこと言われても、一般人には全裸で戦場行けと言っているようなものだぞ」 「まったく…注文の多いボウヤだねぇ…、そのバットをお貸し」 ヤレヤレと溜息をついて、僕の持ってるバットをひったくる。 「――――――――――――――――」 彼女は、バットを握り締め、目を瞑り、ブツブツ言い始めた。 何か唱えているのだろうか? その割には、小さな唇は動いているように見えない。 「…はい、おしまい!」 数十秒ほど経って、彼女がバットを返してくれた。 「何か細工でもしたのか?あんまり変わらないような気がするんだが…」 ちょっと離れて、スウィングしてみるが、特に変わったところは無い。 「バットの性能自体に変化は無いわ。バットを持った人に効果を付けるようにしたの」 「ってことは、今の僕には何か効果が?」 「簡単に説明すると、その人の長けた部分をさらに向上させるようにしてみたわ」 よくわからない。 そのままの意味で受け取ると、回避率大幅アップってことか? 「それじゃ、私は行くね!」 「ほ、本当に大丈夫なのか?」 自分の身は自分で守れ。 さっき絶体絶命の危機を体験した人間には、酷なことだぞ。 「私を信じなさいな。もし危なそうなら、また助けてあげるからさ」 「本当かよ…」 「魔法使いに、不可能は無いのだ!」 アテにならねえ。 「あ、そうそう、明日の学食Bランチの献立変わるから、よろしくね。それじゃ!!」 彼女は素敵なセリフを残して、走り去っていった。 「謎だ…。何で今学食の話が出てくるんだ…。あ、頭痛ぇ…」 僕は、急に胡散臭く見えてきたバットを担ぎ、彼女が走り去った方向とは反対の出口に歩いていった。 公園から出る直前、僕はもう一度振り向いた。 ……なるほどな。明日からは学食も利用してみるか。 公園の反対側で歩いていた女性は、裏山で出会った娘想いの魔法使いだった。 この少女については、六日目の学食のシーンを参照。メリーの名前を知っている初対面の人物が彼女です。 カラスのような生き物をなぎ払ってから、幾度となく様々な影が私に襲い掛かってきた。 この大通りの真ん中でも、転々と停まっている車の隙間から縫うように影たちは近づいてくる。 獣のような形の、大小様々な影が、私を取り囲んでいた。 私は静かに鎌を構え、影の懐に飛び込んでいった。 「――たああぁ!!」 グシャ…メキメキメキ!! 影のクセに、この生々しい感触…忘れかけていた―――いいえ、忘れようとしていた嫌な感覚。 犬のようなものは、もう動かない。 鎌を既に絶命したそれから、嫌な音を立てて引き抜く。 グチュ…ビチャビチャビチャ…。 「ハァッ……ハァッ…ゥッ…ゲホッゲホッ…」 吐き気がする。 グルルルルルル…。 あと数匹…。 半分は減らしただろう、増殖も止んだ。 これだけの数をこなしただけで、こんなに疲れるなんて…。 「ハァ…ハァ…ちょっと…運動サボりすぎた…かな…?」 この闇から抜け出したら、甘い物控えよう…。 「隆一…ちゃんと留守番してるかな…?」 ふと、口から零れた。 今は自分のことで精一杯のはずなのに、何であんなのを心配してるんだろう。 グアアアアアアアァ!! 「クッ!…ハッ!!」 ドス!! 飛び掛ってきた犬を回し蹴りをお見舞いする。 蹴り飛ばされた犬に反応して、二の足を踏んだ別の犬に高速で接近し、延髄に鎌を振り下ろす!! バシュ…!! 犬の首が吹き飛び、蹴り飛ばされた犬もピクリともしなくなった。 「…今ので終わりね……ふぅ…」 しばらく休もう…。吐きそう…。 私は静かになった道路の真ん中で座り込んだ。 何度となく見上げた空をもう一度見上げる。 「どうしちゃったのかな…この世界…」 戦っていれば、原因に近づけると思ったのに。 一向に見えないどころか、影の数や種類まで増えてきた。 「あ…いけない、時間…」 もう1時間は裕に過ぎている。 隆一は何をしているだろう。 影の存在を知らずに外に出ようとしてるかもしれない。 帰らなきゃ。隆一が心配だ。 疲れた体を起こし、ふらふらな足で私は家に戻ることにした。 ドガッ!! キャイン!? 首筋を思い切り蹴られた犬(命名:海苔)は、くるりと宙を舞い、地面に叩きつけられて動かなくなった。 ふれあい開始から絶え間なく続いた攻撃はいつの間にか止んでいた。 「他愛ないな。ま、準備運動にはなったか」 周囲に転がる影の塊たちを見下ろす。 数十はある塊は、どれもピクリともしない。 だが消滅していない。止めを刺していないから。 こいつらは、そのうちくたばる。 苦しみと痛みの中、その身と同じに、命も煙のように消え果るといい。 トントン… もう動くことは無い影を足で蹴り転がす。 実態は無いものの、触れることができる影。 その影が蔓延るこの世界で、いつアイツと出会うか解らない散歩を続けている。 アイツは影に喰われているかもしれない。アイツが影を喰ってるかもしれない。 「趣は無いが、これはこれで…。面白い余興だ」 胸にこみ上げる何かを、笑みに代えた。 こんな感情の高ぶりは久しぶりだ。 「さぁ、殺人鬼と暗殺者の演劇は…。いつ始まるのかな」 メリメリ…バキ…パキ… 道に転がる影を踏み砕き、一人の役者は歩き出した。 もう一人の役者と舞台を探して。 どんどん続きます。
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メリー ロダ up0072 スレネタ ■4スレ目 メリー/4スレ/813-814 ■14スレ目 メリー/14スレ/484 ■22スレ目 メリー/22スレ/377 メリー/22スレ/874 メリー/22スレ/943 ■23スレ目 メリー/23スレ/6 メリー/23スレ/102 メリー/23スレ/516 荒らしをネタにしたもの メリー/23スレ/772 ■24スレ目 メリー/24スレ/93-95 ■25スレ目 メリー/25スレ/22 メリー/25スレ/505 ■おやつ氏 メリー/おやつ氏①
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kraso 食卓をもっと楽しく ぽってり白うさぎの洋風鍋【-】 フリルたっぷりスエード調2-WAYバッグ【N】 andMyera 毎日が華やぐ10年ダイアリー【N】 Couturier 想いを伝えるバラ柄のたっぷりメモとレターセット(ブルー)【-】 ano ne 書いても!折っても!ゆかいな折り紙メモ【C】 くまのがっこう 絵本から飛び出した12柄のメモ【C】 kraso 食卓をもっと楽しく ぽってり白うさぎの洋風鍋【-】 プレゼント番号967369 913:おかいものさん:2012/10/12(金) 14 32 12.79 久しぶりに注文。 なんとなくメリー商品見てたら、うさぎの土鍋が欲しくなった あれ、普通に売ってくれないかなぁ 925:おかいものさん:2012/10/13(土) 01 25 49.04 913 うさぎの土鍋ってこれ?去年か一昨年のメリーカタに載ってた時はお金でも買えたんだけどね 確か5000円くらいだったかなぁ 当時私はメリーでもらったけど、最初に来たのがうさぎの顔に染料汚れがあって交換した 次に来たのはうさぎは綺麗だけど蓋が微妙に小さくてしっくりこなかったw 「メリー商品すらヘリクオリティか…」と妥協して使ってるけど、めっちゃ可愛くて癒されるよ~ 926:おかいものさん:2012/10/13(土) 01 27 19.69 これ?とか言ってURL張り忘れたスレ汚しスマソ http //www.felissimo.co.jp/merry/v2/cfm/products_detail001.cfm?gcd=967369 wk=46405 フリルたっぷりスエード調2-WAYバッグ【N】 フェリシモコレクション番号:- 87 :おかいものさん:2012/09/13(木) 09 28 22.11 メリプレレポ ◎3部屋大人2WAYバッグ たくさん部屋があって荷物が迷子になる私にちょうどいい、他の色も欲しい。 その分バッグ自体が重いので中身を入れたらトレーニングになりそうw andMyera 毎日が華やぐ10年ダイアリー【N】 予約ジャストワン番号:309244 89 :おかいものさん:2012/09/13(木) 12 31 57.23 ○メリプレ 10年ダイアリー イエロー 予想より淡い落ち着いた黄色 WEB写真だと一番下の「箔押しがさわやか」とか説明付きのとこのが一番近い色と思った 10年でいい感じに手垢がつきそうな 装丁はかなりしっかりしてて、表紙の内紙も細かい型押しで高級感あった さすが販売価格3000円w Couturier 想いを伝えるバラ柄のたっぷりメモとレターセット(ブルー)【-】 プレゼント番号:975221 61 :おかいものさん:2012/09/11(火) 15 59 29.32 9月後送分レポ ○想いを伝えるバラ柄レターセット 青い花柄のレターセットが欲しかったので。 1000円にしてはちょっとちゃちいけどまあまあ満足 紙でいいからケースに入れて欲しかったな ano ne 書いても!折っても!ゆかいな折り紙メモ【C】 予約ジャストワン番号:339331 85 :おかいものさん:2012/09/12(水) 23 21 17.85 メリプレのレポ 愉快な折り紙メモ 色ペンで書いた風な素朴?な絵の折り紙。 一般的な折り紙より厚い。まあまあ。 くまのがっこう 絵本から飛び出した12柄のメモ【C】 予約ジャストワン番号339386 9 :おかいものさん:2012/09/08(土) 00 42 31.76 メリプレのくまのがっこうメモと折り紙メモ届いた 中身はかわいいけどめちゃくちゃ小さいし くまの裏表紙は灰色のボール紙で、手書き領収書帳みたいでかわいくない 購入してたら納得いかない感じ サイズはカタログに表記してあったけど、つい大昔の100枚びんせんや国旗のミニノート詰め合わせをイメージしてしまってた グラスセットにすればよかったな 85 :おかいものさん:2012/09/12(水) 23 21 17.85 くまの学校メモ おもてがいろんな柄。どれもかわいい。 裏は全部同じ柄で一色刷り。 72枚入り。これは気に入った。
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5 :創る名無しに見る名無し:2008/11/09(日) 23 50 03 ID ZE3InpFX 私メリーさん…あなたの後ろにいるの… え?丁度いいから肩もんでくれ? お、お客さん結構凝ってますねー。ちょっと疲れがたまってるんじゃないですかー? って何で私が!?
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236 :1 ◆rPvucTqN3Y :2008/11/25(火) 21 58 48 ID bLjI/ytQ メリーが来た次の日、俺は学校を休んだ。 サボったわけじゃない。体力的に無理だったからだ。 昨日の夜はメリーが家に来て、近くのコンビニで夕飯買ってあげたりしたら十二時を回っていたり、 そのあと寝ようとしてメリー用に布団を出してあげたら俺に抱きついて「一緒の布団がいい…」って言ってきて、 そのあと一緒に寝るのはいいとして執拗に俺に抱きついてきて結局ものすごい勢いで俺の心臓が脈を打って、 結局一睡もできなかった。しかもかなり寿命が縮まった気がする。 「陸久、大丈夫?」 昨日すやすや眠っていたメリーが俺の顔を見て言った。 「ごめん…今日は休む…」 「うん…昨日はごめんね?」 「大丈夫…気にしてないから」 そういうなり俺はベッドに突っ伏した。 ああ、布団が気持ちいい…。 五分も経たずに俺は眠った。 「ふぁぁぁあ…ゲッ!?」 起きたらもう五時を回っていた。 (早く夕飯の支度とかしなきゃ…) ガバっと起き上がってベッドに両手を置く。 ……やわらかい感触があった。 (…まさか…) 恐る恐る手を置いたところを見る。 そこにはやはりメリーが寝ていた。ネグリジェで。 しかも俺の手はメリーの胸の上に、ちょうどわしづかみしているような形で置いてあった。 「ん~…あ、陸久起きたんだ。おはよ~」 などとのんきに言うメリー。俺の額からは汗がダラダラ流れてくる。 「うわあ!?」 バッとメリーの胸から手を取る。 俺の顔がまた熱い。 「ん?どうしたの?陸久、顔赤いよ?」 「どうしたって…胸、触られたんだよ?」 「うん。それがどうしたの~?」 「その…恥ずかしいとか、ないの?」 「ないよ~?」 どうやら気にしてないらしい。元人形だったからか? 「いや、気にしてないならいいんだ。それよりお腹すいてない?」 「うん。朝から食べてないからすごいお腹すいた」 やっぱり。 「なんか食べたいもの、ある?」 メリーは「んー」と言いながら少し考えた後、 「陸久の手料理が食べたい」 と言った。 「……は?」 「だから陸久が作ったものなら何でもいいよ?」 (俺何も作れないんだけど…) などとは言わない。言ってはいけない。言ったら男が廃る。 「簡単なものでいいの?」 「うん、いいよ」 早速俺はカセットコンロを取り出して料理を始めた。 材料はさっきコンビニで買ってきたベーコンと卵とバター(総額およそ千円)。 「メリー、たくさん食べたい?」 「ん~、少なめでいいよ」 (じゃメリーは卵三つで俺四つかな…) 取り出したボウルに卵を三つ割って溶く。 卵を溶き終わった後はベーコンを四列ほど切ってフライパンに放り込む。 ジュゥゥといい音を立てながらベーコンが焼けていく。 その中にバターを放り込んで一気に揚げる。 ベーコンがカリカリに焼けたところでさっき解いた卵を一気にフライパンに流し込む。 卵の焼けるいい香りが部屋を満たす。 俺のそばからメリーがひょこっと顔を出してフライパンを覗く。 237 :1 ◆rPvucTqN3Y :2008/11/25(火) 21 59 52 ID bLjI/ytQ 「うわあ、すごくおいしそう!」 「うちの母さんがよく作ってくれたんだよ。中学の間習ったんだ」 焼けてきた卵を箸で端に寄せ、一気にひっくり返す。 またジュゥゥと卵の焼ける音が少しした後、俺は卵焼きを皿に置いた。 「よし、あとはご飯をっと」 先週買い溜めたパパッとライス(こしひかり100%)をレンジに突っ込みチンしてスペアの茶碗に突っ込んでメリーに渡した。 「さ、召し上がれ」 出来上がった卵焼きからホクホクと湯気が立ち上る。 メリーは少し驚いたような顔で俺を見る。 「料理できると思わなかった…」 「余計な御世話だ」 メリーがクスクス笑い出す。 俺もつられて微笑む。 なんだかんだで今晩も楽しくなりそうだ。 時間が七時を過ぎた。 俺とメリーは夕飯を食べ終えてこのあと何をするか考えていた。 とりあえず風呂に入ったので何もすることがない。 (しゃぁない。明日の予定でも考えるか…) 幸い明日は土曜日。藤沢あたりにでも買い物に行ける。 「メリー、明日さ…」 話を始めようとした時、俺の電話がいきなり鳴り始めた。 「あ、ちょっとごめん」 俺はメリーにそう言って電話に出た。 『よぅサボりクン』 清水だった。 「高校生活の五割以上が遅刻のやつに言われたかねーよ」 『別にさぼってねーからいーじゃん』 清水がヘラヘラ笑い出す。 「で、用件は?」 『あー、いや簡単な話。昨日女の子そっちに行った?』 メリーのことだろう。 「ああ、来たけど…」 『で?どうだった?』 「どうだったって何のことだよ」 『いや、だからヤッたのかヤッてないのか聞いてんだよ』 「初めて会う人とヤるわけねぇーだろうがこのアホッ!!」 衝動的に電話を床に叩きつけそうになったがなんとか堪える。 「…で?本当の要件は何だ」 『さすが植村。よく俺の言おうとしたことを察してくれた』 「だからなんだって聞いてんだよ」 『昨日の子、もしかしてお前匿ってる?』 少し考えてから答える。 「ああ…それが?」 『気をつけろよ…昨日、俺確かに彼女の背中に光るものが見えたんだ』 「で、お前はそれが包丁だと思ったのか?」 『うん』 「早とちりしすぎだバカ。他にも光るものがあるだろうが」 写真立てとか鉄とか。 『だから少し考えてから電話したんだけどな。思い違いならいいんだ』 「ああそうかい。じゃ切るぞ」 『あ、そうだ。今度そっち行くから紹介してお』 「却下」 そして電話を切った。 「メリー、明日何かやりたいことある?」 俺達が寝る直前に聞いてみた。 「私?ん~…」 少し長めに考えてからメリーが口を開いた。 「ちょっと外の世界が見てみたいな…お昼ぐらいのが」 ビンゴ。 238 :1 ◆rPvucTqN3Y :2008/11/25(火) 22 00 23 ID bLjI/ytQ 「んじゃ明日買い物にでも行こうか。土曜日だし」 「本当に!?」 子供のようにはしゃぎながら抱きついてくるメリー。 「ホントホント。俺はあまり嘘つかないよ」 メリーの頭をなでながら言う。 「お金は大丈夫なの?」 「大丈夫、四十万ぐらいはある」 高校の時からバイトで貯めた金だった。 とりあえず使う予定もなかったし、彼女のために使うなら本望だ。 「とりあえず今日はもう寝よう、な?たぶん明日走り回ることになるし…」 「うん!じゃお休み!」 メリーが俺をベッドの上に押し倒しながら寝転がった。 どかそうと一瞬思ったが、メリーの幸せそうな顔が目に入った。 (やれやれ…かわいいやつだな、もう…) とりあえず俺はメリーに抱きつかないように仰向けになって寝た。
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【元ネタ】都市伝説 【CLASS】アサシン 【マスター】 【真名】メリー 【性別】女性 【身長・体重】139cm・34kg 【属性】中立・悪 【ステータス】筋力E 耐久E 敏捷E 魔力B 幸運E 宝具C 【クラス別スキル】 気配遮断:B サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。 完全に気配を絶てば、探知能力に優れたサーヴァントでも、 目視以外で発見することは非常に難しい。 ただし、自らが攻撃態勢に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。 【固有スキル】 魔術:C+ 伝達にのみ特化した魔術。 ガラスに浮かび上がる血で書かれたメッセージ、鳥獣による伝言、 電話線が切れてるのに鳴る電話等の連絡困難な対象への意思疎通が可能。 このランクになると相手の顔さえ分かっていれば伝達可能。 追撃:D 離脱行動を行う相手の動きを阻害する。 相手が離脱しきる前に、一度だけ攻撃判定を得られる。 仕切り直し:D 戦闘から離脱する能力。 【宝具】 『メリー・メッセージ(もしもし私メリーさん)』 ランク:D+ 種別:対人宝具 レンジ:10~99 最大捕捉:1人 段階を踏んで完遂させる儀式魔術の一種。 何らかの連絡手段を用いて対象に宝具の真名を聞かせることで、 その対象の周囲の転移可能な位置を把握する。 続けて、「自分はどこにいるか」を聞かせることで、 その通りの場所へと転移することができる。 その転移先はかならず相手の認識の外になる。 通常なら3回ほどの連絡で対象の背後を取れるが、 距離や障害によって、最大10回の連絡が必要。 『楽しい楽しい人形遊び(メリー・メリー・ドールズゲーム)』 ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:0~99 最大捕捉:1000人 メリーさんとその被害にあった者達の怨念がこめられた呪いの人形。 この宝具はメリーさんが消滅するのと同時に現界、発動する。 人形の四肢は呪いが発動したと同時にレンジ内の何処かに展開され、 72時間後、人形の状態がメリーさんを消滅させた者達にそのまま反映される。 3つ目までは簡単に見つかるが、4つ目を通常の手段で見つけるのは不可能である。 【Weapon】 『無銘・包丁』 日本国内で女性が最も良く使ったであろう武器。 【解説】 都市伝説の一種。展開はさまざまあるが、 主に『捨てられた人形の復讐』と、『少女の呪い』に二分される。 前者は、電話等の連絡法を通して徐々に自分が近づいている事を伝え、 最後に相手の背後に立った後に、相手を刺し殺す、という物。 後者は、四肢のない人形を渡し、その四肢を集めなければ、 見つけられなかった箇所をもぎ取られる、という物である。 近代創作においては『いじめにあった少女の復讐』とされたり、 健気でどこか抜けたキャラクターとして描かれることもある。 【イメージイラスト】 メリーさん① メリーさん② メリーさん③ メリーさん④ 【出演SS】 嘘予告・冬木市聖杯大戦の章
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公式 http //www.merrymate.jp/ メリー Q&A 愛国行進曲 イエローガール オリエンタルBLサーカス 首吊りロンド ザクロ バイオレットハレンチ ハライソ 迷彩ノ紳士
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メリーの居る生活 クリスマス特別編3後編 メリーの居る生活 クリスマス特別編3前編からの続き HRが終わり、帰り支度をしていると、帰り支度の済んだ咲と横島が僕の机の前に立ちふさがった。 「ふあぁ~…。何のようだいお二人さん?」 「メリーの風邪、どうなった?」 「食欲は今のところあるみたいだけど、熱は下がってない。しばらく様子見かな」 「…お見舞いは…行ってもいい?」 「あぁ、大丈夫だ。あいつも喜んでるから、行ってやってくれ」 「ん、どうしたお前たち?」 二人と話していると、今回初登場となる俊二が会話に混ざってきた。 「今日メリーのお見舞い行くの。私と横島さんで」 「お見舞いって言っても、ただの風邪なんだけどな」 「む?恒例のクリパは明日だったはずだが…。大丈夫なのか?」 「なんとも言えないな。メリー次第だ」 「そうか。どちらにしと俺は明日行くから、その時まで拗らせてるなら、見舞いとさせて貰おう」 「そうならないように、僕が全力でバックアップする」 そうか、クリパはこいつらが来るんだったな。 風邪が治らなきゃ…。最悪クリパは中止になるかもしれない。 そうしたら、メリーは…。 「意外。俊二君も一緒に来るって言い出すかと思った」 「む。女子三人の会話に俺が入れると思ったか?否、入って欲しいのか?」 「…それはない」 「うむ。その通りだ。…即答されると聊か傷つくな」 「で、二人とも何時に来るんだ?このまま直行?」 「うーん…。お昼食べてからでいいかな?」 「…その方がいいと思う。メリーも準備がいると思うし」 横島が、意味深な言葉を吐いた。メリーも準備って…。なんだ? 横島の言う事は、的を外れた事はほとんどない、確かに僕も部屋を片付けておくくらいの時間も欲しいし。 「そうか、じゃあ来る時にでも電話寄こしてくれ」 「あい、了解」 「…わかった」 二人を教室から見送り、僕も家路に着いた。 へもへも歩いていると、いつの間にか俊二のヤツが横を並行して歩いていた。 「お前も大変だな。クリパ前なのに看病続きだろ?」 「メリーの辛さに比べれば、どうってことないさ。それに準備はお前に全部任せたじゃないか」 「やれやれなヤツだな。クリパまでに完全復活、期待しているぞ?」 「任せとけ。お前も準備サボったりするなよ?山やんに連絡とか」 「抜かりない。全て俺に任せるがいい。今の山崎への連絡は言われなければ忘れる所だったがな」 クリパの準備も、着々と進んでいるようだ。 あとはメリーの頑張り次第だな…。 「ただいまー。あぁ、腹減ったー」 家に入ってすぐにメリーの待つ僕の部屋に向かう。 「ちゃんと安静にしてるかー」 扉のノブに手をかけ、ノブを捻ろうと力を込めた瞬間、扉の向こうにいるメリーの声がそれを制止した。 「…!?待って!!」 「――――おっと!?」 いつもより大きな声で止められたので、僕も何事かとショックで動けなくなった。 「ど、どうしたんだ?何かあったのか?」 「な、何でもないの!いいからそのまま待ってて!」 「…?」 …まぁ、声を聞く限り、とりあえず元気なようだ。 「なんでもないなら開けるぞ?」 「あ、開けないでそのまま待ってなさい!バカ!!」 バカとまで言われてしまった。 メリーは扉の中で慌しくドタバタしている。 それから一分も立たずに、部屋の中は静まり返り、すぐに「いいわよ」というメリーの声が聞こえた。 扉を開けると、メリーは何事もなかったかのように布団の上で座っていた。 「一体何やってたんだ?」 部屋は散らかっているわけでもなく、朝に出たときとなんら様子は変わらない。 「別に…何もしてないわよ…」 「さっき明らかに慌ててたじゃないか…」 何故か肩で息をしているメリー。 髪も少しばらけていて、額には汗がにじんでいた。 「ん?」 「…何よ、そんなにジロジロみないでくれる?」 よく見ると、メリーが着ていたパジャマが昨日のものと変わっている。 …布団の隅には昨日着ていたパジャマが簡単に畳んで置かれていた。 「…あぁ、もしかして着替えてる途中だったのか?」 僕の言葉を聞いたメリーは、意外と簡単に白状した。 「………咲と瞳が来るんでしょ?汗臭いと嫌だから…」 「なるほどね。どうせなら汗拭いといたらどうだ?」 「お風呂入りたいなぁ…せめてシャワーでも…」 「ダメだ。風呂は熱がぶり返す。シャワーは逆に体が冷える」 「うぅ…」 メリーも女性だ、体が汚いまま人に会うのは許せないんだろう。 気持ちはわかるが、ここで風邪を拗らされたら目も当てられない。 「タオルとお湯汲んでくるから、その洗濯物よこしな」 「え…?これはいいわよ。自分で何とかするから」 「アホ。汗臭いから脱いだんだろ。そこに置いてちゃ着替えた意味もない」 「隆一のくせに…。はい、絶対に途中で広げないこと!広げたらただじゃ済まさないわよ!!」 僕にアホなど言われたのがよほど悔しいのか、メリーは脱ぎ捨てたパジャマを丸めて寄こした。 「広げるなって?」 「いいから、もう行きなさい!」 「やれやれ」 何が気に入らないのか、メリーは今日も不機嫌だ。 昨日の大人しいメリーが懐かしいぜ。 洗面台に行き、洗濯籠にメリーの服を入れる。 しかし、このまま丸めた状態じゃ、おばあちゃんが手こずってしまう。やっぱり広げていこう。 洗濯籠に入れてしまえば、後は広げても分からないだろ。 「ん?」 メリーのパジャマを広げる。すると、ズボンと上着の間から、何かが落ちた。 手にとってそれも広げてみると。 「こりゃ、スポーツブラか…」 メリーがこの洗濯物を見られたくなかった理由が分かった気がした。 ちなみに僕の名誉のために弁解しておくが、そのスポーツブラには何もしないで洗濯籠に入れた。 …少しドキドキはしたけど。 洗濯物を片付けた僕は、水道からのお湯に加え電気ポットの熱湯を少し注いで、熱めのお湯の張った洗面器とタオルを持って、再び二階に上がった。 「何も見なかったでしょうね!!」 部屋に入るなりメリーが顔を赤らめて聞いてくる。 「何がだ。ほらお湯持ってきたから体拭け」 そんなカマかけも避けるのが僕の特技だ。 …そういやパンツがなかったな。下は換えなかったのか? そんなことを考えながら、洗面器を布団の横に置く。 「あぁ、そうだ。二人が来る前に布団の位置変えておこう」 「何で?ここでいいじゃないの」 メリーが顔を拭きながら疑問を聞いた。 ここ。というのは部屋の壁際だ。 部屋の一角はメリーの私物で占領されているので、メリーがそこでいいと言ったのだが、二人…つまり三人が壁際で話すには少しスペースが狭い。 どうせなら部屋の中心で持て成したい。というのが部屋の持ち主である僕の考えだ。 「もっと真ん中寄りに移動しておこう。テーブルも近いし、部屋の隅で三人で話すってのも変だろ?」 「そうかしら…。まあいいわ。ほら、さっさと動かして」 「自分で動かそうという考えは微塵も起きないのか」 「言い出したのは隆一でしょ?」 「わかりましたよっと…」 メリーの許可を得て、布団をずるずると中央に引きずっていく。 すると、布団の端から、一枚布切れが落ちた。 「ん?」 「あら?――――――!?」 何が落ちたのかと確認する前に、病人であるはずのメリーが、目にも留まらぬ速さでそれを回収した。 そして回収したそれを後ろ手に隠し、赤面して僕を睨み付けた。 「今…何か落とし―――――」 「い、いい、今の見た!?」 「いや、何だか分からんかった。なんだ今の?」 「わ、分からないなら何でもいいわ、早く布団動かしてどこか行って!」 「何だ何だ?」 布団を動かし終えると僕はメリーに押し出されるようにして部屋から追い出されてしまった。 今日のメリーは忙しいな…。 扉越しに昼食の献立…というより粥で良いか確認をとる。 「おーい、昼飯はどうする?」 「お粥がいいわ。…早く下に行ってくれない?」 「はいはい…出来たら持ってくからな」 「おねがい」 何だか、今日のメリーはいつもより数倍疲れる…。 これが看病の難しさってヤツか? 昼食が終わり、しばらくして玄関の呼び鈴が鳴った。 玄関に向かうと、約束どおり、咲と横島が訪問しに来た。 「こんにちはー。メリーのお見舞いに来ました」 「はいよ、いらっしゃい。とりあえず上がりな」 「お邪魔しまーす」 「…おじゃまします」 あらかじめ、酷い風邪じゃないから、見舞いの品は断っておいた。 それでも咲は気を利かせて持ってきそうだったが、要らない心配だったようだ。 「部屋まで案内しよう。こっちだ」 「メリーってどこで寝てるの?メリーの部屋?」 咲が靴を脱ぎながら、答え辛い質問top3に入る質問を早速聞いてきた。 クラスメイトの女子に同室で寝ているとは、さすがに言いづらい。 「あー…。僕の部屋で寝てるよ。看病もしやすいしさ」 「………」 とっさに思いついた苦し紛れな答えで誤魔化す。 咲はそれ以上問い詰めることはなかったが、そんな僕を横島が何か言いたそうな顔で見ていた。 しかし無口な横島は余計な事を喋ることもなく、ブーツを脱いで家に上がりこんだ。 二人を部屋の前まで案内して、扉をノックする。 「メリー、二人とも来たぞ」 「上げて頂戴」 二人を部屋に招き入れ、僕も続いて部屋に入ろうとすると…。 「隆一、あなたはダメよ。ここは今から女性の領域となったのよ」 「ここ僕の部屋なんだけど」 「関係ないわ。咲、摘み出しなさい!」 「うん、いいよ。ゴメンね隆一君」 「…じゃ」 「男女差別だ…」 抵抗する事もなく、デジャヴなこの流れに身を任せる。 なんかもう疲れた…。 二人はメリーのお見舞いにきたんだ。僕がいるのは確かに場違いだな…。 そう無理矢理納得し、自分を励ます。 「テレビでも見るか…」 部屋から聞こえてくる咲とメリーの笑い声を背中に受け、僕はトボトボとリビングに戻っていった。 『長く居るとメリーの体に障るから』と言う事で、お見舞いは2時間程度で終わってしまった。 紅茶でも差し入れに持っていってやろうと思った矢先の出来事だった。 「それじゃ、お邪魔しました」 「…お邪魔しました」 「おう、またな」 僕は部屋から出られないメリーの代わりに外まで出て見送ることにした。 「悪いな、紅茶でも出そうと思ったんだが…」 「ううん、こっちこそもっと早くお暇しようと思ったんだけど、話し込んじゃって」 「…予定より1時間オーバー」 「笑い声が絶えなかったからな。何話してたんだか気になったぜ」 「ん、聞きたい?」 「…回りくどい訊き方」 「いや、そんなつもりで言ったわけじゃないぞ。聞きたいけど」 「正直な隆一君には教えてあげようかな。大丈夫かな?横島さん」 横島は、二階の僕の部屋のカーテンの閉まった窓を見て、答えた。 「…多分、大丈夫」 「そか、それじゃあ、教えたげる――――」 咲は、もったいぶる様に言葉に間を置き、そして続けた。 「―――メリーはね。君に感謝してたよ」 「37度8分…」 「まだ高いな…。一晩寝て明日熱が下がるかどうかだな」 夕食が終わり、検温の時間。 結果はいいものとはならなかった。 「下がるかしら…」 「そのためには温かくして寝るのが一番だ」 「…眠くないわ。それにもう一度体を拭きたいわ」 「少し前に拭いたばっかりじゃないか」 「眠る前なんだからいいじゃない」 「…ん、確かに」 そう言われると何も言い返せないので、僕はそれ以上何も言わずにお湯を汲んで持ってきた。 「それじゃ、拭き終わったら呼んでくれ」 「ええ、わかったわ」 僕はメリーをその場に残し、部屋を出た。 リビングで新聞の一面を眺めていると、思っていたより早く呼び出しの電話が来た。 いや、さすがに早すぎる。何かあったのだろうか。 心配になって階段を上り、部屋の扉をノックする。 「入っていいか?」 「……い、いいわよ」 返事を確認し、部屋に入った。 「――――――!?」 部屋に入って目に入ったのは、まだパジャマのボタンが全部付けられていないで、手で衣服の胸元を押さえているメリーだった。 「…ゴメン。入ってくるの早かった」 そう言って、部屋から出ようとする僕を、メリーが止めた。 「待って。お願いがあるの…」 「え?」 メリーの姿を直視できずに、何ともない部屋の壁を見ながら僕は話を聞いた。 「その…せ、背中を…拭いて…欲しいの」 「背中?」 僕の聞きなおす声に、メリーは首を縦に振る。 「自分で何度もやってるんだけど…拭いてる気がしなくて、気持ち悪いから…」 メリーの背中を僕が拭く!? 想像しただけで頭がクラクラしそうだ。 「わ、わかった。背中を拭くだけでいいんだな?」 「――ッ!?他の場所は触らせないわよ!?変なことしたら許さないんだから!!」 「そういう意味じゃないってば。…よし」 ゆっくりと近づき、メリーの傍に座る。 し、心臓が飛び出そうだ。落ち着け、落ち着け…。背中を拭くだけだ。やましい事するわけじゃないんだ…。 「…ぬ、脱ぐわよ?…変なことしたら本当に許さないから…」 「わかってるってば」 最後の確認のあと、メリーはスルスルと、上着を脱ぎ、綺麗な白くて小さい背中が露になる。 …あれ?待て。こいつ…ブラはしていないのか? 「…早くしなさい。寒いわ。」 メリーは胸の部分で腕を交差し、胸を隠している。 「お、おう。力加減はこれくらいでいいか?」 「…もう少し優しくして」 「あ、ごめん…」 汚れが取れるように、それでいて優しく、小さな背中を慎重に拭いていく。 「………」 「………」 メリーも喋らなければ、僕も喋らない。 何を喋っていいのかも分からない。 ただひたすら、お湯をつけて絞って、背中を拭く作業を繰り返した。 「ありがとう。もういいわよ」 「…おう」 すごく長い時間、メリーの背中と向き合っていたような気がした。 時間は3分にも満たなかったが、メリーの背中の汚れは十分に取れたはずだ。 「じゃあ、僕はお湯を捨ててくるよ」 「…ねえ、隆一」 「ん?」 メリーは立ち上がった僕を呼び止めると、何かを伝えようとしたようだが、迷った挙句。 「ううん、何でもないわ…」 僕は返事の代わりに笑顔を浮かべ、部屋を出た。 ―――――― 「はぁ、言いそびれた…」 隆一には昨日から良くしてもらっている。 お礼を言いたいのに、急に恥ずかしくなって言いそびれてしまうのだ。 メリーは考える。 この体の火照りは何なんだろうと。 「きっと風邪のせいよね…」 だとすると、何て厄介な風邪なんだろう。 汗が止まらなくなるなら、また体を拭く必要が出てくる。 それはつまり…。 こんな風邪、早く眠って治してしまおう。 そう結論付けると、メリーは早々に布団にもぐりこんだ。 しばらくすると、隆一が部屋に戻ってきた。 ここでメリーの体がまた少し火照り始める。 「あれ、もう寝てるのか…」 隆一の足音が近づいてくる。 メリーの鼓動は、少しずつ速さを増していった。 「最初からこれしとけばよかったな…ごめんな」 隆一の言葉の後、メリーの額に、ひんやりとしたタオルが置かれた。 そのタオルはのぼせた頭を冷却し、メリーの火照った体は落ち着きを取り戻したような気がした。 「ありがとう…」 知らず知らずのうちに、メリーはお礼の言葉を発していた。 意識があったのか、もしかしたらすでに夢の中だったのかもしれない。 ただ、その言葉は間違いなく、隆一の耳には届いていた。 ―――――――――――― 「ん…んん…うう…」 「ん、どうした?」 メリーが眠りから覚め、上半身を起こす。 「…今何時?」 「3時半。水飲むか?」 「うん…、暗いわ…」 メリーは手に渡されたコップを呷る。 「ん、明かりつけるか」 僕は手元の照明のリモコンを操作し、豆電球から弱い照明に変更した。 「…あれ、隆一…寝てないの?」 明かりがついたことで、メリーは僕が近くにいることに気がつく。 まぁ…、水を手渡した時点で気づくべきだろうが、寝ぼけてたんだろう。 「ん、寝てるよ。元々座りながら寝るのが趣味なんだけど?」 「…嘘ばっかり。…あなた、何でそんなに私に尽くしてくれているの?」 「んー…。メリーだからかな」 「え…?」 「だってさ、メリーが辛そうにしているのに。ほっとけないじゃないか」 …そりゃ、メリーの風邪引いた原因は僕のせいだろうし、ほっとくわけいかないよ。 「な、何をバカな事言ってるのよ…。私が言うのもなんだけど、風邪移ってもいいの?」 「いいよ。それでメリーの風邪が治るなら、安いもんさ」 風邪引いてクリパに出られなくなって、年明けまで機嫌の悪いメリーの面倒は見たくないからね…。 「な…!?ななな、何言ってるのよ、ほんとにバカなんじゃないの?バカも休み休み言いなさいよ!このバカ」 「ははは、メリーにそれだけバカバカ言われるほどバカなら、風邪も引かないと思うぞ?バカは風邪引かないっていうじゃん」 「あーもう!あんたも寝なさい、気になって私も寝られないじゃないの!」 「あぁ、ごめん。もう少し向こうで座ってるよ」 「――――――ッ!!おやすみなさい!!ふんだ!!」 「はいよ。何かあったら遠慮なく呼んでな」 照明を豆電球に切り替えて、僕も仮眠を取る体勢に戻った。 ―――――――――――― 『ああああああ!!もう!!何なのよ、今日の隆一は!!』 メリーは布団の中で、心の中のモヤモヤが最高潮に達していた。 何でこんなにイライラしているのか、自分でも解らなかった。 早く眠って、このことを忘れたい。そう考えれば考えるほど、眠気は遠ざかって行くのだった。 ―――――――――――― 「…ねえ、隆一?」 「ん?今度はどうした?」 「眠れないから、そっちに行っていい?」 「…別にいいけど。待ってな明かりをつける」 「ううん、このままでいい」 暗い部屋の中、メリーがもぞもぞと布団から抜け出す気配がした。 はっきりとは見えないが、人影が動き、壁に寄りかかって座っている僕の隣に腰を下ろした。 「…そういえば、前も私この時期に風邪引いてたわね」 「雪合戦した日だな。僕も一緒に倒れて、大変だったっけ」 「あの時、風邪を引いてずっと寝込んでて。これがもし一人ぼっちで誰も看てくれる人がいなかったら…って考えたの」 「頼れる人が誰もいないからな。辛いだろうね」 「ええ。前は同じ部屋で寝込んでたあなたもいたし、おばあちゃんが看病してくれたから安心したけど、今回は私一人でしょ?」 「うん」 「ああ、私一人でずっと横になってなきゃいけないんだって気づいてさ。一人ぼっちで部屋にいなきゃいけないって」 「………」 「でも、隆一。あなたは風邪を引いてないのに、こまめに私の世話を焼いてくれた。今だって…、きっと昨日の夜もこうしてくれていたのよね?」 「うん。…心配でさ。僕も眠れなかった。でも、メリーの寝息を聞いてたら安心できそうだったから、それならここで座って寝ていようって」 「まるで主人に仕える忠犬ね」 「それって褒めてる?」 「もちろんよ」 微かな明かりの中、僕とメリーは笑いあった。 そして、一呼吸置くと、僕の肩をメリーが叩いた。 「…隆一。照明のリモコンを頂戴」 「ほい。明かり点けるのか?」 「逆よ」 肩を叩く手にリモコンを渡すと、メリーは部屋の微かな明かりさえも消した。 「…何も見えないぞ」 「いいのよ。……隆一。私は、あなたにとても感謝しているわ」 「何だよ改まって…」 「明かりが少しでも点いていると言えないから…。…恥ずかしくて。…ごめんなさい」 「いいよ。僕もそう言ってもらえて嬉しい」 「それでね…。…今回だけ、今回だけよ?隆一に、その…」 「……?」 メリーは暗闇の中でも、恥ずかしがって言葉を詰まらせている。 何を言われるのかドキドキして待っていると、メリーが僕の腕をむんずと掴んできた。 「――――手…出しなさいッ!!」 「お、おう」 僕の左手がメリーによって誘われる。 その手が到着した場所は…。 「…私の…あ、頭…。撫でさせて上げるわ…」 「へ?」 予想外すぎる場所に誘導された手は、どう動かしていいかわからず僕の思考ごと硬直した。 「忘れたの?髪は認めた人にしか触らせないのよ?」 「あ…。…ははは。そうか。身に余る待遇、恐れ入ります。姫」 僕はそういうと、メリーの頭を…髪を優しく撫でた。 ただひたすら、同じ動作を、二人は何も喋らずに繰り返した。 どれだけの時間、そうしていたのか。暗闇の中でそれを知ることは出来なかったが、いつの間にかメリーは眠っていた。 「……スゥ…」 メリーの髪から手を離し、額を触れる。 「…熱、下がったみたいだな」 「…ん…んん…」 僕はメリーを持ち上げ、布団にそっと寝かせた。 起きる気配はない。ずいぶんと深い眠りについているようだ。 「おつかれさま。明日の…じゃないか。今日のクリパは思いっきり楽しもうな?」 「……スゥ…スゥ……」 エピローグ 「昨日は稀に見る祭典だったな。友よ!!」 「どこがだ!やっぱお前に任せるのは間違いだったな…」 終業式が終わり、この後は通知表を渡されるのを待つばかりとなった。 「しかし何故山崎は遅れてきたのか。まったく、とんでもないやつだな」 「お前、絶対山やんに偽情報教えたろ?」 「は!俺がそんな姑息な真似すると思うか?この俺が」 「すると思ってるから、こうやって問い詰めているんだ。さあ吐きやがれ!!」 「…うっぷ…」 騒がしい教室の中、聞きたくない声top10くらいには入りそうな声が聞こえてきた。 何故か僕らにしか聞こえていなかったようだ。 「ぬ?何だ。今にも直下型ボムが落ちそうな声だしたの」 「……まさか」 僕は、俊二を突き飛ばし、そーっと机に屈っぷしている横島に近づいた。 「もしかして、今の声…横島か?」 「…そう。…吐きそう」 いつもより別の意味で近寄りがたさが出ている。 いつボムが発動分からないから怖い。 「FPS酔い?」 「…それとは原因の違う、体調不良」 「そ、そうか…。家に帰ったら養生しろよ?…寝ながらゲームとかするなよ?」 「…それは耐え切れない」 「家まで送っていこうか?…家知らないけど」 「…必要ない。…このことはメリーには喋らないでくれると助かる」 「わかった。だから早く治せよ。その風邪は多分厄介だぞ」 「…善処する」 それきり横島は、反応しなくなってしまった。省エネモードに入ったらしい。 僕は横島の席を離れる前に、小さな紙に僕の携帯の電話番号に「困った事があったら連絡しろ」と一言添えて置いておいた。 感想など 最後に、不良に向かって「・・・私メリーさん。今あなた達の前にいるの・・・」とか言わせてみたい -- (砂) 2010-02-26 19 45 45 名前 コメント すべてのコメントを見る